ウサギの死
ウサギ仮面を追い詰める作戦は、時間はかかったが成功した。
だが、それは相手が手負いだったからだ。
奴のみぞおちを俺の突き出した棒が掠めたとき、奴の服に血が滲んだ。
女だからといって手加減できるような相手じゃなかったが思い返すと後味が悪い。
画廊の爆風で吹き飛んだウサギ仮面が、ナイフに突き刺さったのは事故だ。
だが俺はこんなことを前にも見たような気がしてならない。
「不幸な偶然」
人はそれを、運命と呼ぶ。
そのときは熱くなっていた俺だが、もう一人に飛びかかるのを止めてもらって良かった。
今思えば囁きが発動しかけてたのかもしれない。
もう一人のウサギ仮面は喪失した。そのほうが幸せなことだったのだろうと自分に言い聞かせつつ。
俺は錯乱する彼女から目をそらしたかった・・・。
とにかく敵は片付いたし、悪いことばかりじゃねえ。
桂木リンナのいとこアンナについて、いろんなことがわかった。
悪いがここでの発表は控える。信徒に情報が渡っちゃいけねえからな。
俺に何ができるのか・・・今悩んでいるのはそのことだ。
情けねえくらい俺は無力だ。
だけど、絆を信じることはできる。
大事なときだから、みんなの役に立ちたい・・・そう願ってるんだが。
文責:双月響