先は魔道か王道か
『どうも。野菜の値段が下落一方ならば、肉の価格も下がってくれよと願う藤林源治です。そんな、高値安定だなんて、肉なのに腑に落ちない。なんちて。
えー、今回はみんなで集まっての学習発表という形式ではなく、私信と言う形式でもって発表と変えさせて頂きます。そうしなければならないのも、実は理由があるのです。
此度、僕と相方の百々目葵、通称ドメさんは、くちなわ谷から出奔し、叔父の藤林竜胆と共にお館様の側へ赴きました。ですのでしばらくの間、まともに家へ帰る事が出来ません。
こう書くと裏切り以外の何物でもありませんが、いや、これはどう見ても裏切りですよね。しかし、撫子さんを見限ったとか、そういう事では絶対無いので、どうか其の点は御留意頂ければ幸いです。
叔父貴殿と共に、これからの道行きを如何とするのか、ここで詳しく書く事は出来ません。ただ、僕は叔父貴殿に賭けてみようと思いました。実の所彼の心中にあるものが何なのか、今もって計り知れないのが実情です。しかし僕は叔父貴殿が、牢の中で留まってはならない人物だと思っています。たとえ裏切りの汚名を被っても、通すべき理念が藤林竜胆にはあるのだと確信しています。
だからこそ、僕は彼に決起を促す際、理屈ではなく情を叩きつけました。彼の考えというのは不動の意思で貫かれ、恐らくは駆け引きというものが通用しません。冷酷非情の顔をしている彼だからこそ、僕は情で揺り起こすべきだと考えたのです。
叔父貴殿がそれに応えてくれたのならば、彼に賭けるのが男としての筋であります。先にあるのが冥府魔道か王道制覇か、たとえ不透明なのだとしても。
しかしこれで、もうくちなわ屋敷を跨ぐ事は出来ないんでしょうね。かなり寂しいです。東洞院さん、葛野さん、榊さん。気絶させてしまったのは、状況から鑑みるにどう考えても僕なんだと思います。申し訳ありませんでした。』
文責:藤林源治