<ハンターの成立>

 悪戦苦闘を繰り返しながら紡がれてきた人の歴史の狭間には、不可解な現象が数多く存在しています。

 マリー・セレスト号事件、ネス湖の怪物等、表出した有名どころの怪異現象は、ほとんどが科学的根拠の元に原因の看破が為されているのですが、問題は表出しなかった代物です。

 それらの多くに、私達の理解の範疇を越えた存在、「この世に在らざる者」が関わっています。悪魔、精霊、または悪霊といったそれらは、概ね容易く人間を蹂躙出来る存在であり、しばしば私達の日常生活に致命的な悪意を向けてくる事もあるのです。ひとたび彼等の標的へと定められてしまえば、普通の人間は為す術も無く破滅させられてしまいます。

 ただ、人間の方も手をこまねいているだけではありませんでした。

 確かに彼らは、私達が所持する現代兵器のほとんどが通用しません。しかしながら、彼らは決して無敵の存在ではなく、一定法則の元に弱点が必ずあります。加えて彼らは、人間のように強力な組織を作る事もありません。

 こうして大昔から、彼らと、彼らの存在を知る一部の人間による戦いは、それこそ延々と続けられてきました。そして最新科学が日常に溶け込んだ現代にあっても、その戦いは未だ終わっていないのです。人外に対処するノウハウを駆使し、鍛えられた技能でもって「この世に在らざる者」と戦う人間の事は、今ではシンプルに、このように呼称されています。

 ハンター、と。

 

<ハンターになる者>

 生まれた家が昔ながらのハンター一家でも無い限り、ハンター人生に足を踏み入れてしまう切っ掛けは、概ね一つに限られております。それは自身が、或いは身近な者が「この世ならざる者」と関わってしまった事です。

 人間と「この世ならざる者」との接触は、大抵の場合、凄惨な結末を迎える事となります。故にハンターを志した者の動機の多くは、「この世ならざる者」への報復であるのです。勿論、超常現象への強い好奇心に駆られた変わり者も居りますが。

 何れの動機にせよ、彼らは死を覚悟のうえでハンターになりました。名声を得られず、賞賛もなく、全くの無報酬であるにも関わらず、「この世ならざる者」の脅威から普通の人々を守る為に、ハンターは今日も戦い続けています。

 …さらりと書きましたが、そう、ハンターは基本的に無報酬なのです。にも関わらず何故戦い続けていられるかは、後述する事に致しましょう。

 

<ハンターの組織>

 実は大昔から、ハンターの組織は大規模に形成された事が何度かありました。しかしその都度、何らかの要因によって自壊、或いは壊滅させられているのです。この成り行きには、「この世に在らざる者」の中でも最も危険な手合い、悪魔が強く関わっています。悪魔は概ね人間を一回り下に見ていますが、矢張り集団となったハンターは脅威であったのでしょう。

 ハンター組織の勃興と崩壊を幾度か繰り返した結果、現代のハンター達はほとんど単独行動で戦いを続けています。その方が悪魔に目を向けられ難く、個別はさて置き全体としての安全度が高いのですが、無論それだけではハンター生活にも限度があります。彼らも人間ですから、生きる為には食べて行かねばやっていられません。「この世ならざる者」に対抗出来る特殊な武装と知識を、毎度都合良く所持出来る訳でもないのです。

 ですから現代のハンターは、小規模かつ数多くの互助組織を形成しています。あらゆる国のちょっとした大きさの都市には、必ず一つはハンターが集まる「酒場」があります。この「酒場」は相互ネットワークで世界中の仲間達と連携しており、資金や武器、情報の共有を行なっています。高速回線で世界各国が連結している現代においては、或る意味かつてない規模の組織が作られたと言えるでしょう。仮に悪魔が一つの「酒場」を潰したとしても、同様に全世界で存在する幾多の「酒場」を壊滅させる事など、悪魔でも不可能なのです。

 ハンターは特定地域で活動する際、その地域に最も近い「酒場」を利用します。「酒場」でハンター仲間と情報を交換し、怪異に対抗出来る武器や知識の提供を受け、当座の生活に困っているならば、その資金を借りる事も出来るのです。無論、そのお金は借りられるだけであって返さねばなりませんし、酒場から事件解決への報酬が出る事もありません。むしろ資金に余裕があるならば、「酒場」にハンターが寄付をする事もあります。ですからハンターは年中ハンター仕事をしている訳ではなく、アルバイトや日雇いの仕事で日銭を稼いでいるのが現実です。

 実はこういった日常の仕事も、「酒場」が斡旋したりしています。

 

 

 皆さんは「ハンター」の一員となって、この世ならざる者達との戦いに身を投じる事となります。

 その舞台となるのは、アメリカ合衆国。サンフランシスコです。

 

 

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「ハンター」について