悪魔のような人、悪魔的存在。そういう比喩としての表現ではなく、悪魔はこの世に居るんです。人間としては残念な事だとは思いますが。
悪魔だけではありません。悪霊、妖怪、精霊の類。普通の人には単に見え難いだけであって、君達の世界にはそういう得体の知れないものが確実に存在している。次いでを言えば、ここではない何処かに地獄だってあります。
話を悪魔に戻しますと、その存在を定義するものとしては2種類あるんですよ。
一つは、地獄に堕ちた人間の、苛まれた魂の成れの果て。
もう一つは、地獄そのものを形成した張本人。堕天使達の成れの果て。
何れも邪悪且つ、人間とは全く異なる価値観を持っている点では共通しているのですが、前者と後者では決定的な違いがあります。後者の方が、より強大だという事。悪魔になる前から、この世の条理を飛び越えた存在でしたからね。
ただ、悪魔は、それ単体では人の世にさしたる影響を及ぼせません。この世界の物理原則上の縛りにおいて、悪魔は黒い霧のような形を取る事しか出来ない。もし、その力を存分に振るわんとするならば、この世の物理に則した肉体が必要となる。即ち、人の体です。
人の体を乗っ取り、地獄からこの世に顕現して、悪魔が何を目指さんとするか。そんな事ぁ、私の知った事じゃありません。人それぞれと言うならば、悪魔それぞれとも言えるのですよ。だから「彼」が何をもってこの世に現れ出でたのか、それを理解する術は無いんです。
しかしながら君達の中にも知っている人が居るでしょう。66の封印を施されていた「彼」が、先頃遂に覚醒した事を。
かつての最上級天使にして大悪魔、ルシファが復活した事を。
言うまでもありませんが、ルシファは恐ろしい。完全に合致する人の体を彼が得る事が出来たならば、人の世界は、きっと我が身に何が起こったか分からぬ内に破滅します。今はどうやら、違うみたいですが。
彼に呼応して天使達が、人間の事など何とも思わない点で悪魔と似た連中が、ルシファとの戦いに向けて動き始めた事も御存知でしょうか? この世を、地獄を、天国を、全てを巻き込んだ戦争が始まろうとしているのですよ。
で、私は思ったんです。馬鹿らしいと。誰が好き好んで、あの大雑把な大魔王に付き従い、自らも滅びる必要があろうかと。
だから私は、作ろうと思ったんです。
何を?
私の楽園を。
人と、この世ならざる者が居る世界