今回の『この世ならざる者達』は、ちょっと趣向を変えてみようと思います。

 こちらではこの世ならざる者の紹介と、その対処方法について解説をしている訳ですが、今回は畏れ多い事ながら、『神』という存在について様々な考察を行なう所存です。

 サンフランシスコにおける一連の事件に関しては、頭を悩ませる事象が様々に発生しております。その内の一つが、神を称する者達がゲストハウスを中心に複数出現したという話です。現れた神々は何れも名の通った存在ばかりで(キルンギキビだけは不明ながら私も知りませんでした)、一体彼らが何を目的として集結しているのかは私にもよく分かりません。恐らく現地逗留のハンターの方が情報を得ている事と思います。

 一神教であるキリスト教の信者たる私ですが、その教えの中に幾つかの相違がある点を、以上の事実を鑑みれば認めざるを得ません。神は一つではなく、私達の住むこの世界に多数存在しているのです。神とは一体どのような存在なのでしょうか?

 これを突き詰めるのは不敬に過ぎると、特に一神教文化の世界では厳しく窘められるものです。しかし、唯一絶対という一語で留まってしまうのもまた、思考停止状態に等しく思えます。実在するが、触れ得ざる者ではない。そんな身近な神々について、少し思いを馳せてみましょう。

 

神は何故居るのか?

 神は自らの姿に似せて人を形作った。創世記の第一章から既に書かれておりますが、これを頭から信じているのは原理主義者くらいでしょう。私達は地球における生命発生からの過程を経て、人間へと辿り着いたヒト科の最新形態です。

 むしろ神とは人間によって形成されたか、或いは想像もつかない何処かから呼び寄せられたものかもしれません。鈍感な私も、そろそろ身の危険を感じ始めております。

 冗談はさておき、現在の神々の隆盛と衰退を理由として、私はその説を記述します。

 悪魔の侵攻と天使の躍動が世界を席巻しつつある状況からお分かりの通り、今現在の世界で最も強力な存在感を発揮しているのは、キリスト、ユダヤ、イスラムが頂上に置く『名も無き神』の世界観です。全く同じ神を信じているにも関わらず、これらの宗教派閥は過去から今に至るまで、激烈な憎悪と抗争を繰り返す歴史を辿って参りました。言い換えれば、その一つ神は現代社会の政治経済にまで強く影響を及ぼしているという訳です。

 翻って、件の「一つ神」以外の宗教世界は、勿論消滅した訳ではないのですが、世界情勢を動かす程の影響力を行使しておりません。私が言わんとするのは、つまり神とは人間の信仰心の強さ如何で、神とその眷属の影響力に差が出るのではないか、という事です。人間の悲喜交々の思いを受けて、神は神たりえているのかもしれません。

 その考えに拠れば、ルシファが何故恐るべき魔王なのかも理解出来ます。ルシファが地獄の王者である事は、「一つ神」の信者ではない、例えば仏教徒でも知っているくらい有名です。誰もが恐ろしい者だと知っているから、ルシファは本当に恐ろしい。だからもしもルシファを消滅させようとするならば、全世界の人間がルシファに関する知識を一斉に喪失させるしか手段が無いのかもしれません。

 

神との向き合い方

 そんな状況下で「一つ神」以外の神々が行動を起こし始めたのは、ささやかながら救いになるかもしれません。

 少なくともジェイズ・ゲストハウスに居る方々は、人間に対して極めて友好的です。テスカトリポカが唯一例外ではありますが、本来の彼が決して邪神ではない事は周知の通りでしょう。そういう方々に対して、私はハンターである皆さんに、かような接し方をお勧め致します。

 彼らに親しみ、頼ってみて下さい。そして感謝の気持ちを傾けて下さい。神々は人間から寄せられる心を糧とし、影響力を強めるはずです。

 

現在の情勢について

 ゲストハウスの主、QUEが言うところに拠れば、人間が感知出来ない場所で繰り広げられた戦いは、既にルシファの軍勢が勝利を手にしているとの事です。そんな中でも、日本とバチカンが未だ陥落していないのは心強い事です。

 日本は1億2千万の日本人自身が、無意識の内に神の存在を信じているのが強みであったのでしょう。それを端的に示すのが、太陽をお天道様と自然に表現する事にあります。普段の生活の中に、当然のようにアニミズムを取り入れているという訳ですね。

 今の日本は極めて面白い状況です。神道の神々は勿論、妖怪や他国から逃げ込んだ一部の神、果ては黙示録の進行を拒否する天使までが参加し、混沌としながらも連合を組んでルシファの軍勢相手に優勢な防衛戦を繰り広げています。

 バチカンはと言えば、ミカエルを筆頭とする天使の軍勢とルシファが、黙示録の進行を積極的に推し進めようとしている事実に早くから気付いていました。反黙示録派の天使を味方とし、法王は極秘裏に騎士団員を世界各地に派遣しているそうです。もしかすると皆さんの居られるサンフランシスコにも、バチカンに属する人間が紛れ込んでいるかもしれませんね。

 

 しかしながら、サンフランシスコは特異な状況にあります。全世界で天変地異や地域紛争が頻発している昨今において、どういう訳かこの街は実に静かなのです。勿論この世ならざる者達の跳梁は活発なのですが、前述の異常現象はルシファの進撃が大きく影響したものと言えます。つまりサンフランシスコでは、かの者の侵攻が食い止められている。

 これを日本やバチカンのような希望的状況を捉えるのは、些か早計です。この街で戦われるハンターの皆さんにおかれては、どうかその旨を心に留めておいて下さい。

 

 

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この世ならざる者達:『神々についての考察』