悪魔はハンターの主敵です。この世界には様々な「この世ならざる者」が闇に潜んでおりますが、それらが人に及ぼす怪異現象は、そのほとんどが偶発的なもので、交通事故の被害に遭うようなものなのです。しかし悪魔は違います。狡猾に知恵が回り、明確な悪意を人間に向け、彼らの行動方針は人間を如何に破滅させるかという所で、ほとんどの場合が統一されております。まさしく人類の敵と言えるでしょう。悪魔に対抗する為に、ハンターは存在していると言っても過言ではありません。

 

悪魔の成り立ち

 私達の世界には、地獄が実在するのです。一般常識で言われているように、地獄には救われない魂が堕ちて行きます。そして地獄におけるありとあらゆる苦しみを経て、更に魂を歪めてしまうものが居り、それらが何らかの故あって地上に現出した際、多種多様な怪物として人に危害を及ぼす存在となります。悪霊の一部がそうですし、危険な魑魅魍魎の類もそうです。

 ただ、ハンター達が戦う悪魔の定義については、実はそれらと分けて考えねばなりません。と言いますのも、いわゆる種としての特性を備えた悪魔は、悪魔という独立した種族なのです。私達人間が神を崇めるように、彼らもまた彼らが崇める神に影響を受け、悪魔としての形を為しました。悪魔を作り出したもの。悪魔の神。その名はルシファです。

 

悪魔の前兆

 悪魔は私達の世界に出現した時点では、特に力を振るえる訳ではありません。大抵の場合、黒いもやか煙のような姿を取る事しか出来ず、そのままでは人間に物理的な力を行使する事が不可能なのです。折角忌まわしい地獄から這い出てきたにも関わらず。

 そういう訳で、悪魔は人間に取り憑こうとします。概ね心の中に何らかの問題を抱える人物を彼らは好みますが、状況によってはなりふり構わぬ場合がありますので油断は出来ません。まずは悪魔が出現する際の予兆を記しますので、今後の参考としてお役立て下さい。

・体の不具合が、何の前触れもなく悪化している。

・屋内の家電製品が誤作動を頻繁に繰り返す。

・周辺で異常気象が発生する。

・現実的な悪夢を頻繁に見るようになる。

 

悪魔の分類

 別の項でお話ししました通り、悪魔には「地獄に堕ちた人間が変貌したもの」と「ルシファに付き従い、堕天した天使達のなれの果て」という2種類が存在しています。

 しかしながら、悪魔と一口に言っても、その特徴や分類、危険度は更に5つくらいに分けられます。今後悪魔と関わり合うにあたり、その分類を以下に表記して参ります。

 

○五級 : T classis (テー・クラシス)

・特徴:眼球全体の黒色化(ただし普通の眼球に戻す事も可能)

・出現の予兆:体の不具合の悪化

 悪魔の中では尖兵的な扱いです。力も普通の人間よりは強いですが、悪魔特有の超能力が使える訳ではありません。初心者ハンターが執行する悪魔祓いで簡単に地獄送りに処する事が出来ます。

 ただ力が弱い分、出現する際の予兆が分かり辛いのが厄介な点です。それでもこの階級であれば、取り憑かれた人間自身へのダメージは少なく、悪魔祓いによって十分助ける事が可能です。

 

○四級 : V classis (ウー・クラシス)

・特徴:眼球全体の黒色化(ただし普通の眼球に戻す事も可能)

・予兆:体の不具合の悪化、家電製品の誤作動

 この辺りになると、かなり危険な存在になります。身体能力は跳ね上がり、相手の身動きを取れなくするくらいのテレキネシスを用いてきます。尤も、そこそこのハンターであれば「気合」で呪縛を突破する事も可能ですが。

 取り憑かれた人間は、心身共にかなりの痛手を被っています。それでも致命的な怪我を負っていない限りは、しばらく入院する事で体へのダメージは癒せるでしょう。心の傷を癒せるかは、本人次第になりますが。

 

○三級 : X classis (イクス・クラシス)

・特徴:眼球全体の赤色化(ただし普通の眼球に戻す事も可能)

・予兆:体の不具合の悪化、家電製品の誤作動、異常気象の発生

 黒色眼球の悪魔は、イクス・クラシスによって指揮されている事が多いのです。有象無象の悪魔を束ねられるだけあって、その力は相当なものと言えるでしょう。この辺りからテレポーテーションを要所で使ってくるようになり、サイコキネシスも突破出来なくなります。それなりに腕の立つガーディアンによる、結界破りを用いなければなりません。

 取り憑かれた人間を助ける事は、非常に難しくなります。ガーディアンの呪的処置ならば、何とかする事が出来るでしょう。

 

○二級 : Y classis (ユー・クラシス)

・特徴:眼球全体の黄色化、白色化(その他にも色が存在しているものと思われる。普通の眼球に戻す事も可能)

・予兆:体の不具合の悪化、家電製品の誤作動、異常気象の発生、現実的な悪夢の頻繁化

 最上級のハンターでも、余程の手段が無い限り勝てません。テレポーテーションを惜しみなく使い、致命的なサイコキネシスは人間を即死させる事も容易く、これも最上級のガーディアンでない限り、防ぐ事も突破する事もままなりません。天気を操るような事すらやってのけます。

 それと言うのもユー・クラシスは、元々天使だったものが多いからなのです。少し前に出現していたアザゼルも、この分類になるでしょう。例外はリリスです。彼女は元々人間だったのですが、ルシファによって悪魔にされた最初の人間でもあります。その恩恵を賜った挙句の果てに、最上級悪魔の仲間入りを果たしました。リリスによって、街一つが滅ぼされた記録も残っています。幸いな事に、アザゼルとリリスはウィンチェスター兄弟によって存在そのものを滅せられているので、彼らに出くわす事は金輪際ないでしょう。

 取り憑かれた人間を元に戻す事は、ほぼ不可能です。ただしこのクラシスの悪魔ともなると、自分の力に持ち堪えられる人間を選ぶ傾向があり、彼らによる呪縛を最後まで耐えきった人間ならば、助かるチャンスがあります。

 

○一級 : Z classis (ゼータ・クラシス)

・特徴:不明

・予兆:不明

 ゼータ・クラシスについて、分かっている事はほとんどありません。ただ神への叛乱の際、ルシファに従った上級天使達がこの分類に入るものと思われます。有名どころではベルゼブブ、モレク、ベリアル等です。

 彼らは今のところ地上に出現しておりません。ルシファの再蜂起にも呼応する気配がないのですが、恐らくはかつてのルシファ同様、地獄の檻に繋がれたままなのでしょう。これは神が施した檻ですので、おいそれとルシファも破れるものではありません。その縛めが維持している幸いを、神に感謝しなければならないでしょう。

 何しろ誰も見た事がありませんから、ゼータ・クラシスがどれ程の存在かを知っている者は居ません。ただ、恐らく彼らを倒せる者がいるとするなら、大天使か神くらいのものでしょう。

 

 尚、ルシファは上記クラシスの分類に入っておりません。彼は自身が悪魔になったつもりはありませんし、ゼータ・クラシスを更に凌駕しているのは間違いないからです。

 

悪魔への対処

 一般入手出来る範囲で悪魔が忌避するものとして、以下が判明しています。

・塩 (T、V、X まで有効)

・聖水 (T、V、X まで有効)

・銀 (T、V、X、Y まで有効)

 あくまで忌避するものですから、上記で致命傷を負わせる事は不可能です。悪魔に勝つには、特殊な手段が必要となります。

 勿論悪魔祓いがその筆頭なのですが、その他にも霊符を用いた結界や、ソロモンの輪等も補助的な対抗手段としては有効です。

 悪魔そのものを滅ぼす方法は、非常に限られていますが存在します。悪魔殺しの武具がそれです。「悪魔殺し」は、この世に幾つか存在しているそうですので、もしも手に入れるチャンスがありましたら、あなたにとってこれ以上はない武器になってくれるでしょう。尤も、悪魔の側も自分を殺せる武器を放置するはずがありませんので、その存在を躍起になって探しています。ハンターがその武器を入手したと知られたら、悪魔の攻撃が当のハンターに集中する事も覚悟した方がいいでしょう。

 

 

 

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この世ならざる者達:『悪魔』