<ノブレム本拠地>
ヴラド、レノーラ、それにジュヌヴィエーヴというノブレムの上層が一堂に会するその前で、ヴィヴィアンは先のハンターとの共闘について報告を行なった。
その結果は、対サマエル戦を進行させるハンター陣営、ひいてはノブレム側にとっても非常に意義深いものだったが、それでもヴラドとレノーラは固い表情を崩していない。
「ルスケスのふざけた市全域への告知は、まことであったか」
「信じられないわ。人間が次席帝級を戦闘不能に追い込むなんて」
「つまり、ジルを駆逐した者は人間ではなかった、という事さ」
ヴィヴィアンが肩を竦める。ヴラドとレノーラは、当然のようにジルとの関わりも長い。それ故、ジルの力量の程も重々承知している。ジルの戦線離脱はノブレムにとって途轍もなく有利ではあるが、心に去来する複雑な感情は否めぬところなのだろう。出来れば、ジルは自分達が抹殺したかった、との本音が見て取れる。
「しかし、ルスケスの言い様に拠れば、ジルは未だ生存しておる。彼奴を常識で推し量ってはならない。見つけ次第、斬首すべきであろう」
「ともかくヴィヴィアン、良い仕事だったわ。あなたはハンターとの連携が上手い。普段を見れば、とても人付き合いが良いとは思えないのだけどね」
「そりゃ心外だなぁ」
「あなたには奇妙な人徳がある、という事なのでしょう。その気があるなら、引き続き先の件に関わってもいいわよ」
これにて、場はお開きとなった。立ち上がる面々に対し、それまで黙って成り行きを聞いていたジューヌがヴィヴィアンを呼び止める。
「お話したい事があります。ヴラド、レノーラ、よしなに」
受けて二人は丁重に頭を下げ、部屋を辞して行った。ヴィヴィアンが舌を巻く。あの月給取りだった人の良い女性が、人間へと変化した時点を皮切りに、吸血鬼の女王然とした風格を備え始めている。当のジューヌは正面からヴィヴィアンを見据え、静かに語り出した。
「レノーラを守る力、ですか。とても献身的で心惹かれる話ですが、私が皆々方に力を与える、という感覚が、私にもよく分からないのです」
「と言うと?」
「新祖という身になってから、皆々に芽生えた特殊な異能の数々は、意図的に引き起こしたものではなく、自然発生的に発言しました。つまりこれは、元々の才能が勃興した、という風に言えるでしょう。それがヴィヴィアンに発生しないのは、思うにルスケス側の異能を会得しているからだと私は考えます」
「…ルスケスが帝級を介して与えた力が、可能性に蓋をしている、って感じなのかい?」
「そうですね。しかしヴィヴィアンは、私の系列でありながらルスケスの力を引き出すという、とても興味深い立ち位置に居ます。そしてその力は多様に渡っていて、より実戦的です。ですので、ヴィヴィアンには選択肢が2つあります。ルスケスの力を私が全て消去して、本来起こり得た異能を会得する。或いは、現状維持のまま高い汎用性を選ぶ。選択権は、お前に委ねます」
「二兎追う者一兎を得ず、か。難しい選択だね」
「考える事です。そして考える力がノブレムを、ひいてはレノーラも守る術と成り得るでしょう」
<H4-6特:終>
※次回以降のアクトで『仕える者の異能』の全てを破棄すれば、以下の異能を取得する事になります。
・光精 (ウィル・オ・ウィスプ)
10ヶの光球が浮かび上がり、攻守に渡ってPCを助けます。光球は使用者の意図の元で完全に制御され、攻撃を命じれば敵に向かい、守りに徹すれば攻撃を受け止めてくれるでしょう。威力と防御力も高いです。ただし過剰な強さの手合いには、破壊される事が十分有り得ます。使えるのは1アクトに一度のみです。
○登場PC
・ヴィヴィアン : 戦士
PL名 : みゅー様
ルシファ・ライジング H4-6特【結果報告】