<郭小蓮のインタビュー>
「庸」の関係者でもあるハンター、郭小蓮と、「庸」の首魁である京禄堂との対話は、京の邸宅にて鍋をつつきながら行なわれた。以下、ICレコーダーより抜粋。
「この火鍋子、強いて言えば麻辣の香りが些か強い。確かに麻辣抜きで四川は語れぬが、火鍋子は豊富な素材の味を楽しむべきなのだ。もう少し平衡への注意を払うがいい。まあ、基本的な味付けは水準以上である。合格点を進呈しよう」
「お褒めにあずかり、光栄ですー。大人はお料理の腕前もプロ級と聞いていましたし」
「余暇は全て料理に充てるのでな。これで上達せねば食神に見放されておるのだろう。尤も、作った料理を振舞う家族はわしにはおらぬ」
「奥様は?」
「病気で死んだ。君が生まれる前だ。子供もおらぬ。尤も、かような家に生まれた子供は不幸になろう。京家の嫡子とあれば、どうやっても後継の火種となるでな。さて、雑談はこれまでだ。この京禄堂と鍋を食う為に、君はここに来た訳ではあるまい」
「いえ、目的の半分は『大人と鍋』なんですけどー。こうして一介のチャイナタウン住民と会食して下さるなんて、大人良い方ですね」
「いいから用件を言いなさい」
「はーい。まず、一つ目。下界の『廟』と、京家の紋様が入った封印についてなんです」
「そう来たか」
「あの廟と封印が設置された理由を教えて頂けないでしょうか」
「君は龍脈を知っているか?」
「そりゃー、華人ですから。レイラインと同じ思想ですよね。地球の血管。氣の流れる道筋」
「その龍脈の流れを縮小させたものが、あれらの廟なのだ。よくよく廟の位置を見れば分かろうが、あれは一点に氣を注ぎ込むように配置されておる。所謂『龍穴』目掛けてな」
「龍穴。地球の呼吸器ですよね。あ、まさかそれが、京家の封印なんですか?」
「察しが良いな。あの霊廟は、街の人の氣を絶えずして封印に注ぎ込み、あの者の力が損なわれぬようにしている」
「あの者?」
「かつて下界が作られるに至った理由が、かの者にある。あの膨大な面積の地下世界は、かの者を探し出して滅せんが為だけに掘り抜かれたのだ。何者かが、意図して、あの異常な世界を作り上げたのだよ。庸を立ち上げたわしは、下劣な犯罪世界と化していた下界を殲滅する為に兵を挙げる腹ではあったが、その手前で奇妙な声を聞いた。『災厄を御する力を、我に授けよ。さすれば見返りを与えん』と。わしは天啓と断じ、下界との戦争の火蓋を切った。そして目的を達し、かの者の力が損なわれぬように龍脈を引き込み、今に至る。そのお陰でもって、かの者が言う災厄は抑え込まれたままだ。災厄とは何ぞやと問うと、かの者は言った。理(ことわり)を瓦解するものだと。人の理、この世の理を。謎かけめいてはおるが、それが想像を絶する災厄だとは、わしにも分かる」
「大人が仰るところの『かの者』って人は、もしかして、封印の直下に今もおられるんですか?」
「そうだ」
「…どういう方なんです?」
「名はメルキオール。本当かどうかは知った事ではないが、天使だと言っていた」
<ジェイズ・ゲストハウスにて>
「天使とな!?」
と、ジークリッド・フォン・ブリッツフォーゲルは素っ頓狂な声を上げた。今は酒場も人気のない時間帯で、奇異なものを見る目を向けられる事は無い。
郭のインタビューはジークリッドとの連携の下で行なわれていた。こうしてICレコーダの録音再生に耳を傾け、京大人から得た情報を元にジークリッドが実地調査を行なうという段取りだ。前回の探索で発見した、尋常ではない数の廟と奇妙な封印は、下界における一連の出来事の核ではないかと彼女等は見たのだが、仔細を知っているであろう京大人に実際話を伺ってみると、それは驚くべき事実の数々だった。
「ハンターになって日は浅いが、天使に遭遇したという話はさすがにベテラン級からも聞いた事がないぞよ。しかし、よくもまああの京大人がここまでしゃべるものじゃな?」
「あ、それはちゃんと理由があったんですー。その内出てきますから、最後まで聞いて下さいね」
<郭小蓮のインタビュー:2>
「他にもお聞きしたい事があるんです。ほら、これって何だか分かりますー?」
「EMF探知機だな」
「あ、よくお分かりで。普通はインチキウォークマンとか言われるものなのに。で、この探知機は『この世ならざる者』が出現する際の電磁場異常を探知するんですけど、その電磁場異常が3ヶ月ほど前に複数大発生したんですよね。その内の一つに、チャイナタウンも含まれていました。これらの複数異常発生は、一つの流れに収束すると思うんですよね」
「ふむ。王の所の城鵬も似たような事を言っておったな」
「無視出来ない状況だと思うんです。例の封印について、もっと調べてみたいなーって。率直に言いますけど、あれ、掘っちゃってもいいですか?」
「ならん」
「一発で撃沈ですー」
「あの封印は…わしが施したものだ。メルキオールと『下界を作り上げた者』を引き合わせぬ為にな。奴が抑え込んでいる何かは、翻ってこのサンフランシスコに甚大な害を為すものとわしは見た。あの者は命を懸けて戦っておる。その意を汲むは、たとい黒社会の者と言えど果たさねばならぬ義である」
「封印って、もしかして大人も道士なんですか!?」
「あの者に見返りとして戴いた力だ。先の話、封印破りは承知せぬが、あの者と接触する術については考えぬでもない」
「と言う事は…」
「その下界の封印の場に、わしも同行しよう」
<ジェイズ・ゲストハウスにて:2>
「マジかえ」
ジークリッドは椅子からずり落ちそうになった。
此度の実地調査は、王如真と自分の2人だけで向かう手はずだった。1人でも参加者が多い方が助かるが、それがよりにもよって京大人とは。そしてとどめの一撃を郭が口にする。
「もうしばらくしたら大人が来られますから、適当に挨拶だけはお願いしますねー」
<郭小蓮のインタビュー:3>
「背信三氏の本拠地がハンターズ・ポイントとは確定しているんですけど、其処では異常な下界が構築されていたそうです」
「報告は聞いた。積極策を許可したのは、わしの失態である。あたら若者の命を散らせてしまった」
「件の地での下界に心当たりは?」
「全く無い。が、話に聞いたその下界の様子は、まるでわしが潰しにかかった頃のそれにそっくりだ。面妖な話だが、あれを再現させる事が出来る者とは、恐らくメルキオールと対立する『下界を作り上げた者』であろう」
「…カスパール」
「高位悪魔の名か。まあ、図星なのだろうな」
「ちなみにその悪魔と、最近現れた敵対的な吸血鬼集団は、リンクしているらしいんです。それも地下下水道、下界を出入りするという手段をも使って。これは確定情報として考えていいと思います。もう庸の一般戦闘員じゃ、手も足も出ない相手ですよね。ハンターと庸は団結しなければ、最早この苦境は乗り切れないと思うんです」
「少し前のわしであれば、そもそもこの会食の場を持とうとも思わぬ。こうしてペラペラと秘匿事項をハンターである君にしゃべる事もない。それをするのは、我々が敗北に向かってひた走る状況下にあると認識したからだ。そこなICレコーダは、ハンターに開示されるのだな?」
「はい」
「ならば断言する。我々庸は、ハンターの活動への全面協力態勢に入る。何れ幹部連には、非常事態を宣言しよう。手始めとして、強力な武器類をジェイズに卸す」
「商売なんですね」
「当たり前だ。庸は慈善団体ではない。少なくとも下界での事件については、人的協力を惜しむつもりはないがな」
「良かったですー。ようやく光が見えた感じがします。最後にもう一つ、これは注意事項なんですが…」
「言ってみなさい」
「ここ最近、各氏精鋭の中で急に性格が豹変している人はおられますか?」
「わしが把握しているのは1人のみ。王如真だ」
「知っていたんですか。と言う事は素行も或る程度認識しているんですね。まさか、ル・マーサに出入りしているとか…」
「出入りどころではない。奴はマーサに深く入り込んだ、フレンドと呼ばれる者だ。特に表立って異常な行動をしてこなかったので黙認はしていたが、急激な怪我の回復に関する先の報告は、あまりにも奇妙であった。奴に気を許すでない。とくと注視せよ」
<ジェイズ・ゲストハウスにて:3>
レコーダの再生が切られ、ジークリッドと郭は向かい合わせのまま黙り込んでしまった。
王如真について幾つかの奇妙な点が見受けられるのは、下界絡みで活動する面々にとっては周知の事実だ。常軌を逸した回復能力。豹変したという性格。それらはル・マーサという団体に結びついていると、最早考えざるを得ない。
「それでも」
と、ジークリッドは苦い顔で言った。
「如真には個人的な恩義があるし、彼の性向が注意を払うべきものであるとはどうしても思えん」
「でも、大人は露骨に警戒の目を向けてます。あの人の審美眼は信頼出来ますよ」
「そもそもマーサについては門外漢じゃ。あれがどういう組織であれ、如真という男は信じてみたい…」
と、ゲストハウスの扉が軋み音を立てて開かれた。丁度厨房から出てきたマスターのジェイコブが、其処に立つ男の姿を見て幾分口元を引き攣らせた。タイミング遅れでそちらを見遣った2人の少女も、似たような顔になる。入ってきたのは京禄堂。郭との約束通り、下界行に付き合う為にやって来たのだ。しかしその立ち姿に関しては、各々一言言わずにはいられない。黒いラインが入った山吹色のトラックスーツ。でっぷりと太った体にピチピチフィット。
「燃えよデブゴンか?」
「燃えよデブゴンじゃ」
「燃えよデブゴンですー」
「…今の無礼な発言は聞かなかった事にしてやろう。ま、李小龍は華人社会の英雄だからな。わしくらいの歳の者なら、誰しも一着は持っている。動き回るならば、こいつに限るのだ」
「しかし、よくもまあゲストハウスが入館を許可したな」
「入れろ、と扉に向かって言ったら勝手に開いたのだ。『君は面白そうだからOK』という声が脳裏に聞こえてきた。それでは行こうか、そこな少女よ。こう見えても準備は万端である」
ブルース・リーへの思い入れはさて置いて、京大人の姿勢からは本気度の程が伺える。そういう相手に対して心苦しいのだが、それでもジークリッドには言わねばならない事がある。
「…如真との約束は明後日なのじゃ」
<真下界:パレス>
背信三氏の制圧下にある真下界は、ハンターズ・ポイントからの侵入を易々と許せる状態にある。それでも庸の手によって、まかり間違って一般人が入らぬよう、地価への入り口には厳重な縛めが施されていた。
しかしながら、先だって庸と行動を共にした2人のハンターは、その拒絶の範疇に居ない。庸を含めた普通の人間では太刀打ち出来ない状況でも、ハンターならば対処が効く。ラスティ・クイーンツ、ナタリア・クライニーの両名は、再びかの魔境へと足を踏み入れる。
真下界。かつての隆盛を模した虚ろ世。その中心域、パレス。
「いやもう、本っ当に隣を歩いて欲しくない」
「やだわ、この娘ったら。たかが白薔薇刺繍入りのチャイナドレスに出前のラーメン屋を装って岡持ちを抱えているだけのアタシと居るのが、そんなに恥ずかしい事なのかしら」
断言する。恥ずかしい。
ナタリアとラスティは、突如として喧騒の只中へと変貌した真下界の通りを、ひっそりと小走りで進んでいる。白薔薇刺繍入りのチャイナドレスに出前のラーメン屋を装って岡持ちを抱えている分際でひっそりも何もないのだが、実際、真下界の住人達は2人の姿を気にも留めない風だった。これは前回の時と同様、こちらから彼らに「介入」しなければ、向こうも無反応のままであるらしい。
通りは賑やかで、淫靡で、ただれた情景を醸していたが、それらは矢張り架空の存在でしかない。ここはまるで、極彩色に彩られたコンピュータの中の街である。
「町人A:『ここは真下界のパレス前タウンです』。なんちて」
「ところで」
一つ咳払いをし、ナタリアはラスティに出来るだけ声を抑えつつ囁いた。
「私達を呼び寄せたカスパール。ラスティはその真意を何と見る?」
「それを確かめにアタシ達はエッコラやって来たんでしょ」
「いや、普通するだろ、想定くらいは」
苦虫を噛み潰したような顔で、ナタリアは周囲を睥睨した。通りは進めば進む程、人の行き交いが派手になっているように思える。
「この景色、言い飽きたけれど尋常ではない。この尋常ではないものを地下に張り巡らしてしまうような奴が、カスパールって化物だ。クソみたいにプライドが高いXclassisがへりくだるような。相手はYclassis。最早私達には太刀打ちすら出来やしない。話をしたい、だと? 本当に話だけなのかい?」
「まあ、何か誘いをかけてくるくらいは考えられるかもしれないわねえ。おまえ達、下僕におなりっ!みたいな」
「はっ。向こうにその気があれば、私らはとっくに奴の靴を舐めてるさ」
「どちらにしても、カスパールと面を合わせて話をするのはチャンスと捉えていいかもしんないわね。何しろサンフランシスコ全域で発生している異常現象の、ほとんど全てに絡んでくるような奴なんだから」
等と言い合いながらも、2人はしばらくもすると口を噤んだ。今度は明らかに人通りが少なくなった。それに気付いてから程なくして、2人は目的地らしき場所に辿り着く。
「あら、凄いわね」
「…何だよ、このやたら重厚な屋敷は」
視界は一挙に開けた。
青空が広がり、燦燦と太陽が輝く風光明媚な景色に溶け込むように、意匠を凝らした大理石の邸宅が聳え立つ。その威容はパレスを称するに相応しい。屋敷前の庭は広々として、瑞々しい木々と花々が風にそよいでいる。振り返れば、真下界の猥雑な通りは霧消していた。
「地下に青空と太陽か」
「もう驚くのはやめるけどね」
しばらく立ち尽くしていたナタリアとラスティは、ふと剪定に勤しむ庭師の姿を目に留めた。庭師もこちらに気付いたらしい。麦藁帽を取って、にこやかにこちらへと歩んで来た。如何にも人が良さそうな、壮年の華人。その顔を、事前の情報として2人は知っていた。
「孫明よ。ハンターズ・ポイント担当の元幹部」
「憑かれたか。悪魔に」
言葉を失くす2人の前に、孫明だった男が無警戒な姿を晒した。そして丁寧に一礼。
「初めまして、ハンター諸君。私の招きに応じてくれた事に謝意を表します」
「じゃあ、あんたが」
「そう、カスパールと申します。しがない悪魔などをやっていましてね」
カスパールは笑った。その笑みからは、何も読み取る事が出来ない。
カスパールの案内で、2人はパレスに入館した。中は外観よりも更に広く間取られており、内装はバロック調の重苦しい調度品で飾られている。その途上で、2人は多くの使用人達を見た。てきぱきと動き回り、カスパールと自分達に恭しく挨拶を寄越す幾多の男女。ざっと見積もって20人以上。恐らくは屋敷の中に、それ以上に人数が居る。ナタリアとラスティには分かった。奴等は全員、悪魔だ。
「君達に託したブロンズメダルですが、あれは人間がパレスに立ち入る唯一の手段なのですよ」
カスパールは応接室のテーブルに2人を促し、自らも上座に座った。そして女給を呼ぶ為のベルを鳴らす。
「君達の素直さには感激しました。ハンターという人々には、どうにも荒っぽい気性という印象があるものですから。そう、私は話がしたいだけなのです」
女給が紅茶のポットと菓子を持って現れた。テーブルに行儀良く並べる姿を何気に見て、ナタリアは目を剥いた。ブロンズメダルを渡してきた女の悪魔だ。盧春香の首を刎ねた人外。
「あんた、よくも抜け抜けと…」
「ウェリネといいます。以後、お見知りおきを」
物腰こそ丁寧だが、ウェリネの目は据わりきっている。銀の散弾を至近から撃ち込んできたナタリアを、腹の底では嬲り殺しにしてやりたい。そういう目だ。
硬質化する空気を全く意に介さず、カスパールは2人に茶を勧めた。ラスティはカップを手に取って匂いを嗅ぎ、遠慮なく紅茶を口に含む。混ぜ物を仕込むようなまどろっこしい事をカスパールはしないと、彼には分かっていた。その様をカスパールは楽しげに眺める。
「こうして来て頂いたのは、先にも申しました通り、本当に話をしたかったからです。君達とは、これから恐らく長い付き合いになります。ハンターと悪魔が敵対し、互いを滅ぼすべく戦いを繰り広げる。実に清く正しい世界のあり方です。私は率直に、殺し合う者同士の共感を君達に覚えます。さあ、会話を楽しもうではありませんか」
「ここに来たのは、それはもう大変な勇気だったわ」
そうは言いながらも、ラスティは口元に余裕の笑みを浮かべている。
「それに見合う話が出来ればいいのだけど。アンタはアタシに、誰に勝つ方法を教えてくれるのかしら」
受けてカスパールは首を傾げ、台詞の意味を若干図りかねている風だった。して、返して来た言葉は人を食う代物である。
「ハンターの君達が勝たねばならない者と言えば、それは私ではないのですか? 私に勝つ方法については、おいそれと教えられません。私も簡単には死にたくありませんから。しかし努力すれば、きっとその手段も見つかるでしょう。頑張って下さい」
「ありがとう。アタシ、頑張るわ」
「ふざけるな、トンチキが」
ラスティを遮り、ナタリアがテーブルを拳で叩いた。そして散弾銃の実包をカスパールに見せる。
「こいつの粒は銀じゃない。戦の用意なんてしなかったよ。どの道勝ち目なんてないんだからさ。あんたは簡単に私達の首を捩じ切る事が出来る。それをしないで話をしたいのだとあんたは言う。じゃあ聞こうじゃないさ。あんた、この街で一体何をやろうとしている? こんな所でまどろっこしい事をしているのを見る限り、ルシファの復活を企む訳でもあるまい」
「その情報は間違っています。私は知っているのかと思っていましたよ。既にルシファは復活していると。事は順調に、彼の思惑通りに進んでいるのです。…何をしようとしているのか、具体的に言うのはつまらないですから、ちょっと抽象的な表現を試みてみましょう」
2人は勘付く。相変わらず慇懃な態度だが、ルシファの名が出た途端、カスパールは一層饒舌になった。
「この世の終わり、そして始まり。君達が言うところの黙示録は、シナリオ通りに履行されようとしています。神を心から愛し、愛の果てに地獄へ堕ちたルシファもまた、シナリオを忠実に守る役者の1人に過ぎません。あの鼻持ちならない熾天使達もね。ルシファは悪魔を従え、ミカエルは天使達を率い、悪と善が大迷惑な一大決戦。で、私は思ったんですよ。馬鹿らしいと。誰が好き好んで、出来の悪い台本通りに事を進めねばならないのかと。悪魔も、天使も、そして人間も、決して滅びて良いはずがない。そんな事は、神もお望みではないはずなんです。実行される黙示録を前にして、ならば私は作ろうと思いましてね」
「何を?」
「楽園を。楽園を定義するのは困難です。しかしまかり間違っても、それは天国の事ではありません。楽しみだけが存在する世界などは、その楽しみに比する苦しみが無ければ、魂にとって正しく砂漠の如き有様でしょう。悪魔も、天使も、そして人間も、傷付き地に伏せ、希望と共に立ち上がる喜びが無ければ、その魂の行き着く先は『無』であると私は思います。黙示録に惑わされぬ、幸福と不幸が同居する楽園。その楽園をこの街に作り上げる。それが御主の導きによって私が得た結論なのです」
「御主。アンタの親玉ってとこかしら。何ていう人」
「内緒です。今のところはね」
言って、カスパールは唇に人差し指を当てた。ナタリアが鼻を鳴らす。
「どうせ具体的な話はしないだろうと思っていたよ」
「ここで全てを明かしてしまうと、君達と私の楽しみが無くなりますからね」
カラカラと笑うカスパールを睨みながらも、ナタリアは意識を切り替えた。
カスパールは本当に会話のキャッチボールを楽しんでいるように見受けられる。とは言え、そんなものに喜んで付き合う程、自分とラスティはお人よしではないし暇でもない。
「アンチ・クライストを知ってるかい?」
ナタリアが問う。
「悪魔の血を引く人間。天使の軍勢と渡り合える劣化版の神。居るのか、このサンフランシスコに」
「ほう」
カスパールは目を丸くしてナタリアを見た。
「良い勘をしていますね。居ますよ、サンフランシスコに1人だけ」
「誰だ。何処に居る」
「教えません。と言うより、近付かない方がいいと思いますよ。あれには私でも勝てませんから。あれには、あれなりに担う役割があります。放っておいた方が双方幸せです」
「大災害の源になるぞ。楽園の異端児だ。あんたより強力なものを、思い通りに出来るとは考えられないね」
「私は其処まで大それた事は考えていません。ま、私以外にそれを考えている男も居るみたいですが。大災害、結構結構。それもまた楽園を構成する要素です。立ちはだかる壁は高いほど素晴らしい」
ナタリアは呆れて匙を投げた。変わってラスティがカスパールに聞く。
「最近は吸血鬼や、某新興宗教なんかにも手広く関与している風じゃない? 悪魔の数は随分多いみたいだけど、そんなのに頼るようじゃ、揃いも揃ってボンクラ風味ってワケ?」
「おお、これは頭の痛い事を」
「余程の人材不足とアタシは見たわ」
「仰る通り、人手は幾らあっても助かりますね。実は、ちょっと君達には期待しているのです。どうです、私と一緒に楽園創生の仕事に励みませんか? 勿論、君達に悪魔を憑かせるなんて野暮なんざ致しませんよ」
「やっぱり、それも考えていたのね。悪いけど、NOよ。アタシは悪魔を葬り去る為に生きて来たわ。ご覧の通り、アタシは全身が贋物で出来ている。このでっかい胸も、性別もね」
「イチモツは本物だけどね」
「ナタリア、茶々を入れないの。で、本物はイチモツ以外にもあるわ。それは心。アンタ達を地獄に叩き落してやりたいっていう、ハンターとしての本性。こればっかりは、アタシはアタシを偽れないのよね」
自称した通りの大きな胸を反らせ、ラスティは得意げに言った。対して彼を見るカスパールの目は、不思議な事に、ある種の憧憬の色があった。そして呟く。
「いいなあ。やっぱり人間は、いいなあ」
結局、首を晒し台の上に並べられる事も無ければ、悪魔に魂を乗っ取られて下っ端戦闘員にされる事も無かった。カスパールは本当に彼らを招いただけで、まるで茶会の主催が客を見送る調子で玄関まで共に歩んでいる。
それにしてもカスパールは、これ迄彼等が見た事の無いタイプの悪魔だった。大抵の悪魔は人間と接触する際、何等かの意図を必ず持っている。それは大抵の場合、人間にとって災いとなるものだ。稀に共通の目的の為に手を組む事もあるにはあったが、その性根に仲間意識は皆無だ。そもそも悪魔を仲間と認識する甘さをハンターは持ってはならない。悪魔を憐れんではならない。悪魔は存在そのものが悪であり、魔であるからだ。
翻ってカスパールには、悪魔が持つ意図というものが非常に見え辛い。やった事と言えば、遠まわしながら自らの目的を話しただけだ。ならば、その目的をハンター達に打ち明けた事にこそ、カスパールの意図があると見るのが妥当だろう。手の内を見せ、ハンター達がどのように動いてくるか、カスパールは或る程度の筋道を立てているに違いない。それを類推するのは非常に困難だが、ハンター達は深く考えねばならない。何しろ敵はYclassisであり、そのYclassisが更に崇める存在も見えてきた。敵はあまりにも強大だった。
「さて、それではここいらでお別れしましょうか」
庭の玄関口まで来る。上機嫌のまま、カスパールは別れを切り出した。
「最後に一つ頼み事がある」
ナタリアが言う。その背中を、ラスティはカスパールには見えない位置から、ドンと叩いた。悪魔を相手に頼み事など、人間は絶対にやってはいけない。100%、人間を利用するネタにされる。カスパールがその例外であるはずは無いのだ。しかしナタリアは、それを口にしてしまった。泰然とした笑みを崩さないカスパールに対し、ナタリアは構わず続けた。
「悪魔なら、天使を殺す武器を持っているんじゃないのかい? あったら、融通してくれない?」
「ほう、君は天使と一戦交える腹なのですか? やめといた方がいいと思いますが」
「天使が人間の味方じゃないくらい、とうに分かってるさ。あんたの知らない所で、ひっそりと天使が死ぬ分には問題無いだろう。どうなんだい?」
「まあ、そうですね。しかし残念ながら、天使を殺す武器は大概天使が持っているのですよ、残念ながら。堕天した仲間を始末する為なんでしょうね。何とも野蛮な事です。そういう訳で、私は天使殺しの武具は持っていませんが、代わりにいいものを差し上げますよ」
言って、カスパールは2人に小さなカプセルを渡した。
「超能力覚醒剤です。これを飲めば、悪魔がよく使っているような観念動力を身につける事が出来るようになります。この力は日を追って強くなり、ついには悪魔を思念だけで殺せるようになるでしょう。いいですか、地獄に戻すのではなく、殺す事が出来るのです。これからの戦いに大いに役立ちます。どうかお近づきの印に、取っておいて下さい」
あからさまだとラスティは思った。これ程分かり易い罠も無い。悪魔殺しの物品を、当の悪魔が渡すのだ。ナタリアは不審そうにカプセルを眺めているが、自分はそれ以上の胡散臭い顔になっているはずだと、ラスティは自覚した。
そう言えば、と、ラスティは気付いた。そう言えば「例の兄弟」に抹殺されたアザゼルという悪魔が、似たような事をやっていた。後天的に力を分け与えられた、超能力を持つ子供達の量産。成長した子供達の末路が如何なものであったかを思い出し、ラスティは顔から表情を消した。
「それでは、私からも最後に1つだけ」
彼らの様子などは気にも留めず、カスパールは世間話を切り出す調子で、深刻な話題を振ってきた。
「そろそろ下界には本格的に打って出ます。今の時点では、君達が相当苦しい状況に追い込まれるのが手に取るように分かります。しかしながら、想像の範疇を超えた力を発揮するのが人間ですから、そこのところは個人的に楽しみなのですよ。それじゃ、これからも頑張って下さい。ごきげんよう」
パチン、とカスパールが指を鳴らした直後、2人はハンターズ・ポイントの倉庫に居た。
「…あれが、敵か」
「アイツの台詞じゃないけど、本当、長い戦いになりそうだわね」
ナタリアとラスティは嘆息し、下界への入り口を厳重に閉じた。
<下界:封印と霊廟>
「人生七転八倒って言うけどさ(注:言いません)、下界行もこの辺りになると色々限界が見えてくるのよね。何かもう一つ新しい事にチャレンジしないと、突破口が見えて来ないって言うかさ。ま、そんな訳で探索方法に一工夫の風を吹き込んでみたのよ」
下界探索組はクレア・サンヴァーニを先頭として、地下の割には広く取られた通路を進んでいる。後続は王如真。それにジークリッドと、トラックスーツの京大人。
チームを組んで下界に入る前に、クレアは単独で下界の事前調査に勤しんでいた。それは地味ながら危険の度合いも高い仕事である。幸い敵に接近遭遇する事はなかったものの、矢張り仲間と共にあるのは安心の度合いも高い。それに今回初参加の京大人は、地下封印について何らかの目的をもっていると聞く。取り敢えず行動に明快な目標が設定されているのは精神衛生上とてもよろしい事だ。クレアはいよいよ機嫌よく、先頃の成果と結果をしゃべり倒した。尤も、相槌を打つのは専ら王如真のみであったが。
「つまりだ、ラジオコントロールのミニ車両に、例の通行票をくっつけて進ませるのよ。ラジコン車両って言っても、おもちゃをカスタマイズしたようなものだけどね。ジェイズの機械類強い系の子に、色々改造してもらったよ。踏破性を高めて、なんとビデオカメラも装着したわ。携帯端末にリアルタイムで映像が送られてくるようにもしてもらった。凄いでしょ。ムービーを録画してあるんだけど、見ちゃう?」
「凄いですね、それは。見ます見ます。これは面白そうだ」
勢い込む如真の様に気を良くし、クレアはムービーをスタートさせた。
携帯端末の映像は、正体不明の照明があるとは言え薄暗い。カタコトと上下に揺れながら、ラジコン車は人の早歩きくらいの速度で賢明に走っていた。ちょっと可愛くて健気だった。
「いいですね。順調ですね」
「ほら、もうすぐさ。目的の場所だ。庸管轄の下界通用口。ここをもしも機械だけで出入り出来るようになったら、何れ『向こうさん用』の通用口にも応用出来るかもしれない。したらあんた、人的損害もなく敵地の調査活動が出来るってワケ」
印をつけてある下界通用口を右手の間近にして、ラジコン車は視界を若干左に切った。そして大きく膨らみながら弧を描き、勢いをつけて通用口を真正面に捉える。突進。
そしてラジコン車は壁に衝突し、一瞬レンズが天井を映し出した。直後、ブツリと映像が途切れた。クレアと如真は、揃って大きな溜息をついた。
「あらら、ラジコンでは通用口突破は無理でしたか」
「哀れなラジコン車は修理に出す羽目になったよ。ともかく分かったのは、票はナマモノが持たなきゃ効果を発揮しないって事かな」
「人間、という限定ではないんですね?」
「どうも敵性の吸血鬼集団が、似たような票を使ってるらしいしね。だから、多分悪魔だって使えるんだろうね。ともかく、こうして回を重ねて僕が得られた成果はと言えば、こんなものじゃないかしら」
言って、クレアはつまらなそうに下界の見取り図を広げた。何気にそれを手に取り、如真が目を見張る。そしてクレアに断りを入れ、大人にもそれを見せた。
「これは、サンフランシスコ下界の完成図か」
大人は如真よりも驚いていた。
「確かに幹部各氏に地図の断片を持たせているが、それを組み合わせてもここまでにはならない。しかも庸の通用口と、『向こう側』の通用口まで網羅しているではないか」
「ああ、そんなのは前回で調査済みだけど」
「それとは違う印もあるな。これは?」
「あの訳の分からない霊廟だよ。今回の探索で、多分全ての位置を把握したと思う。EMF探知機をアップグレードしたから、然程苦労しなかったわ」
「凄まじいな。廟の正確な位置など、最早わしを含めて庸の人間は誰も知らぬぞ。クレアと言ったな、君は大した者だ」
「え、そうなの。これって凄いの」
実は、クレアは凄い事をやっていた。今この場において、クレアは広大な下界について最も習熟している存在となったのだ。それもこれも、下界との関わりを始めてからの、地道なマッピング作業に拠るものである。継続是力也。例えて言うなら、効果の程を疑いながらも毎日のジム通いの果てに、『何その脹脛の異様な筋肉』と指差されるまでになってしまった、というところか。
「今後の活動が有利になる。例えば『向こう側』が攻め込んできた際に、迎撃の配置も思うがままとなろう。地の利を知るは勝利の基本であるからな。この地図は貴重だ。大事に持っておくが良い」
「いや、別に僕は持つ必要ないけど。その地図、全部頭の中に入っているから」
京大人は絶句した。横では感心したように如真が頷いている。
「大人、それでは、僕がその地図を預かりましょうか?」
「否、矢張りクレアが持て。みだりに庸の人間にも見せるでない」
京大人は差し出された如真の手を無視し、半ば強引に地図をクレアに押し付けた。
一連の遣り取りを、ジークリッドは後ろからじっと眺めている。
京大人は、如真に対する警戒の姿勢を固めているらしい。今の態度は、まるで敵側との繋がりを懸念しているかのようだった。幾ら何でもそれは有り得ないだろうとジークリッドは思う。悪魔と一戦交え、ウェンディゴに殺されかけた修羅場を、彼は自分と共に潜り抜けてきた。その心根に嘘偽りは無い。ジークリッドは、そう信じている。
そもそも京大人にしても、彼に期待する向きがあるから、此度の探索への同行を許したのだろう。ジークリッドが如真の肩を軽く小突く。振り返った如真の顔は、相変わらず優しい。
「怪我の具合は良いのか? 回復したとは言え、本調子でもあるまい?」
「心配御無用ですよ。今回も足を引っ張らないように、ガッツリ働きます!」
朗らかに二の腕で力こぶを作る如真に、ジークリッドは「そうか」と言って笑った。しかし。
あの時は助けてくれてありがとう。
その簡単な感謝の意が、どうしても口には出来なかった。
目的の場所までもう少しという所で、不意に京大人は足を止めた。
「如真よ。お前はここで見張りをしろ。異変が無いか、つぶさに気を払うのだ」
「分かりました。お気をつけ下さい」
如真は素直に従い、角に立って周囲を伺い始めた。大人がジークリッドとクレアを連れ、再び先へと進む。
「わざと置いてきたのじゃな?」
声を潜めて、ジークリッドが言う。大人は小さく頷いた。
「あの者、意図の有無がわしにも分からぬでな。わしも勘違いであって欲しいとは思う」
息を詰めて会話する2人を怪訝に眺め、クレアは前方を見直した。
この道中において、結局敵と呼べる者には遭遇しなかった。初期の背信三氏配下や悪魔、その後のウェンディゴ開放に至るまで厳しい戦いをハンター達は強いられていたのだが、敵による進撃は突如としてピタリと止まった。しかしあれだけの事をしでかしながら、この先何も動かない、とは到底思えない。だからこそ、此度のこの静かさが余計に不気味である。
ともあれ、クレアとしては些か鼻白む展開である。何しろ彼女はこの探索の為、自らに重装を施していたからだ。自分が所持する武具の一つ一つに、対霊魂、対魔獣、そして銀化を施すという念の入れよう。
「結局一回も使わなかったじゃん」
しかし未使用の場合は次回に持ち越せるので、それはそれで安心である。
3人が封印の場に立った。被せた土くれを払い除けると、前回同様京家の紋様が入った蓋が露出する。
「全て鉛で出来ておる。鉛は魔のものの侵入を防ぐと言うでな」
言って、京大人は持参したバッグを開いた。中には大量の霊符がぎっしりと詰められている。その異様な数を見、クレアとジークリッドは思わず覗き込んだ。
「これは?」
「封じられたかの者と、僅かに意思を疎通させる為だけに、これだけの霊符が必要である。これら霊符は桃の木を素材とし、道士自らが彫った手製の壇場法器を押したものだ」
「壇場法器って何?」
「法印だ。まあ、印鑑みたいなものだな。持参したのは通霊印、道祖印、四大明王印、普告三界印、その他諸々計八種類。一種類あたり16枚の計128枚。これらを風水に従って適切な位置に貼る。場所を指示するので、手伝ってくれ」
そうは言われたものの、これがかなり難儀な作業だった。大人から指示された霊符の貼る位置は緻密で、少しでもずれると駄目出しが出る。それを128枚とは中々に大変だ。何気にジークリッドは、質問を投げかけた。
「これで少し意思を疎通するだけと申されたな? なれば仮に封印を破るとなると、どうせねばならんのじゃ?」
「まあ、言っても問題なかろう。奴もこの場には居らぬ。封印を解除するには、法印が二百六十四種類、一種類あたり128枚の計33792枚、それに道士本人の寿命が必要となる」
「…途方も無いな。まあ、道士の命に関わると分かった時点で、封印解除は非現実的であると分かったぞよ。小蓮ちゃんが『掘りますー』とか申していたのも、そもそも無理があったという訳じゃな」
「そういう事だ。しかしながら、もう一つ安楽な方法がある。念の為、君達には言っておこう」
大人は作業の手を止め、冷酷な声音で2人に告げた。
「大量の霊廟を破壊し、力を絶つ。これでかの者の、災厄を抑える力も損なわれよう。なれば封印の意味は霧消する。そうならぬよう、心することだ」
霊符を貼り終え、準備が整った。しかしながら京大人は特別な儀式を催すでもなく、ただ静かに膝を着いて、掌を鉛の蓋に当てた。掌と蓋の間には、一枚の紙が挟まっている。
程なくして、その現象が発生した。
「来た」
大人の呟きと共に、白紙に文字があぶり出しのように浮かび上がる。非常に短いラテン語だった。大人は読めないので、代わりにクレアが目を走らせる。
『cras parare』
「準備せよ、かな?」
『hostis est』
「敵が来る」
『a mensis laxus』
「一ヵ月後」
『!? cautio ?!』
「注意しろ!」
その途端、3人の体はドンと下から突き上げられた。そして直後に激しい縦揺れが襲い掛かり、3人は咄嗟に体を伏せた。地震だ。それもかなり大型の。
「でかいぞ!」
「直下型ってやつ!?」
「これは…普通の地震ではないな」
しばらくの間恐るべき揺れに翻弄され、しかし地震は1分もたたない内に終息した。向こうの通りから王如真が慌てた調子で駆け寄ってくるのを認め、ようやくジークリッド達は立ち上がった。下界の壁は、あの揺れを前にしても欠片もこぼれていない。
「余震があるやもしれんな…。本日は早々に戻った方がよかろう」
「否、恐らく余震は無い」
手早く帰り支度を整えながら、京大人の曰く。クレアが首を傾げる。
「どういう意味?」
「これも災厄の一環だ。メルキオール、最早御するが困難であるのか?」
と、再び白紙に文字が浮かび上がる。それは執拗に、この言葉を繰り返していた。
『cras parare』
<H2-3:終>
○登場PC
・クレア・サンヴァーニ : ポイントゲッター
PL名 : Yokoyama様
・郭小蓮(クオ・シャオリェン) : ガーディアン
PL名 : わんわん2号様
・ラスティ・クイーンツ : スカウター
PL名 : イトシン様
・ナタリア・クライニー : ポイントゲッター
PL名 : 白都様
・ジークリッド・フォン・ブリッツフォーゲル : ポイントゲッター
PL名 : Lindy様
ルシファ・ライジング H2-3【蠢動】