<キャンピングカーにて>

 実は、まだキャンピングカーに居るのです。

 それはさて置き、真赤誓はマックスとアンナをガードすべく、まだキャンピングカーに逗留していた。例の事件が落着した後、キャンピングカーは即座に水性ペンキの着色が落とされ、最早別の車のようになっている。その甲斐あってかは分からないが、一般のマーサ会員達もキャンピングカーの行方を把握出来ていない気配がある。ただ、彼らの行動が突如目立たなくなったのは、別の要因に拠るのかもしれないが。ともあれ、キャンピングカーは今しばらくモーターホームとしての役割を担えそうだった。

 マックスとアンナは、そんな訳で一緒に生活している。事件が終わって四日目に入り、マックスも随分と落ち着きを取り戻していた。アンナはアンナで、あの一件以来ぎこちないながらもマックスと会話を交わすようになってきた。元々本当の意味で嫌っていたのではないのかもしれないと真赤は思った。

 そうなると別の意味で心配になるのが、一つ屋根の下で若い男女が共に暮らすアレコレなのだが、多分その辺りは心配無い。何しろマックスはマックスなのだから。今日もマックスは甲斐甲斐しく、鼻歌交じりに炊事を担当している。アンナは変装して買い物に出かけた。嵐のような四日前に比べれば、今の暮らしはとても静かだった。

『そこの若いハンター君』

 後ろ姿のマックスに呼びかけられ、真赤は何とはなしにそちらを見、すぐに眉間に皺を寄せた。奴だ。マックスの口を借りて一方的に話してきた『何か』だ。

「真赤誓だ」

 真赤が短く応える。

『では真赤君、お願いがあります。彼をミッション・ドロレスの旧教会に連れて来て下さい。マックスと、きちんと話がしたいのです』

「嫌だ。てめーはこいつに、色々と拒否られていたのをもう忘れたか」

『ドロレスで色々などは出来ません。段階を踏まえ、適切な場所に来ない限りは。そしてその場所は、ドロレスではないのです。繰り返しますが、私は話をしたいだけです。現在の彼の考えを、今一度把握したいと願いましたから』

「信じられないね、そんなもん。嘘かもしれねえ」

『私には、嘘を付く概念がありません。悪魔とは違いますから。どうなさるかは、真赤君の判断に任せましょう』

「俺や仲間達が同行してもいいのか」

『勿論です。歓迎致します。ところで、少しだけ長く話しましたね。そろそろ何かに掴まった方がいいでしょう』

 『何か』が言い終えると同時に、キャンピングカーの車体が地面から突き上げられた。

「何だ!?」

「地震だよ、これは!」

 台所にへばりつきながらマックスが応じる。『何か』は再び去り、今のマックスはマックスであるらしい。

 地震はしばらく続いた。直下型の大きな揺れだ。したたかに車内を揺らされ、ようやく静まった頃に、買い物袋を抱えたアンナが血相を変えて飛び込んで来る。

「あんた達、怪我は無い!?」

「嗚呼、アンナ、僕を心配してくれるのかい?」

「誰が心配なんかするもんか。豆腐の角に頭ぶつけておっ死ね」

「今日は麻婆豆腐なんだよ。よく分かったね」

 この2人は、意外にいいコンビなのかもしれない。

 それはともかく、矢張り以前同様マックスは何も憶えていない風だった。『何か』は自分の言った事がマックス自身に残らないと見越し、自分に用件を託したという所だろう。実に迷惑な話だが、かと言って検討しない訳にはいかない案件でもあった。

 

 

<H4-3-:終>

 

 

○登場PC

・真赤誓(ませき・せい) : ポイントゲッター

 PL名 : ばど様

 

 

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ルシファ・ライジング H4-3-3【コンタクト】