<2人の女神様>

「まずは目標の達成、おめでとう。2人とも、とても良くやり遂げたわ」

「ブリュンヒルデ様、わたしの体でスナック菓子を貪るのはやめて頂きたいんですけど」

「こんな味の濃いものをよくたべるわよねー、人間は」

 ヴァルキリーからの呼び出しを受け、エーリエルとドラゴはモーターハウス内の皆が寝静まった頃合を見計らい、声を落として彼女らとの接触を図った。尤もその配慮も、容赦なくドリトスを食うブリュンヒルデが意味をなくしてしまったのだが。

「さて、それでは本題だけれど」

 エーリエルの体を借りたブリュンヒルデが、口元を拭いて身を乗り出した。

「君達、私達を憑依させるつもりはない?」

 身を乗り出した格好のまま、彼女の眉がひそめられる。今度はエーリエルに交代したのだ。彼女の疑念はドラゴにも同じくであり、エーリエルに代わって彼が質問した。

「たった今、エーリエルの口を借りている様は如何なものですかな?」

「いやいや、こんなもんじゃないですから」

 ブリュンヒルデが胸を張って続ける。

「より具体的に力を貸す、という事よ。ジャベリンとシルトは更に力を増し、まるでありがちなファンタジーの如く、超カッコいい鎧を身に纏う姿になるわ! 残念ながら、見た目だけのホログラフィーみたいな代物だけど。一応動きの邪魔にならないし、別にいいでしょ」

「何ですかそれは」

「気は心って言うじゃない。次いで身体能力も跳ね上がる。『加速』の効果も上乗せられるわよー。パワーは厳しいけど、速度だけなら次席帝級とやらにも引けを取らないわ。でも、いい事ずくめのはずはない。負荷が酷いのよ。1時間でも使ったら、1週間は足腰が立たなくなる。だから、1時間が過ぎれば強制的に離れるわ。君達を死なせる訳にはいかないから」

「しかし、どうしてそのような進言を?」

「敵が更に強さを増している。遂に天使が出るという話は私も聞いたわ。これを凌ぐ為に、こちらも本腰を入れようと思ったワケ」

 ブリュンヒルデはくつろいだ格好をし、ふと目を細めた。

「でも、これはゲイルスケグルのソレと同じではないから安心して。彼女はあまりにも入れ込み過ぎたわ。自分の愛情を寄せる対象が、まさかあれ程の漆黒だったとはね。あれは取り込まれたと言うより、ゲイルスケグルを鍵にして限界の扉をこじ開けた、との表現が適切かもしれない」

 パン、と拍手を打ち、ブリュンヒルデは声の調子を高めた。

「さて、前を向きましょう。この力、勿論強制ではないからね。君達は戦術で戦い抜く才能を備えているし。君達の意識を乗っ取るなんて真似は当然しない。私達、自主性を重んじる女神様だから。で、更にもう一つ問題があるんだけど。私とアルヴィト、どちらがどちらの体に憑依するか」

 ブリュンヒルデの顔が怪訝なものとなる。今度はアルヴィトが表に出て来たのだ。

「私、女の子がよろしいのですが」

「ここは姉に譲るべきじゃないかしら?」

「こんな時だけ姉さん面ですか? それだったら妹に配慮したっていいじゃありませんか」

「だって私、女の子だし。女の子の方が性に合うし」

「女の子って年齢ですか。三十代女子とか称する、現実を見ない甘ったれですか」

「何ですって、あなたも相当に年食っているくせに」

「やめて、私の口で言い合いはやめて」

「ところで私があまりにも可哀想ではありませんかな?」

 結局、憑依の対象は「ブリュンヒルデ⇒エーリエル」「アルヴィト⇒ドラゴ」で一応の決着と相成った。

「うう、こんな筋肉の塊みたいな殿方に憑依するなんて」

「私があまりにも可哀想ではありませんかな?」

 

 

<H4-6特:終>

 

 

○登場PC

・エーリエル・”ブリトマート”・レベオン : ポイントゲッター

 PL名 : けいすけ様

・ドラゴ・バノックス : ガーディアン

 PL名 : イトシン様

 

 

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ルシファ・ライジング H4-6特【アドヴェント】