46924円(税込)

 

リーマン時代に買った俺のダイナブックが、遂に壊れた。それが今月最大の事件だったよ。取り敢えず「戻る」ボタンを押したくなったら、それをためらわない方がいいぜ。これから無駄話がダラダラと続いて行くからな。

きっかけはハードディスクの「ギギギギ」だった。最近どうも読み込みがおかしいと思っていたら、そりゃもう突然の「ギギギギ」だったよ。其処から坂道を転がり落ちる石の如く、俺のパソコンは狂い始めた。読み込みが極端に遅くなる。何故かネットに1分間しか繋がらない。フリーズ、フリーズ、フリーズ。音声を出しゃあスピーカーから呪いのビデオみたいな異音に変わるときたもんだ。

智恵子を見守る高村先生の気持ちはこんなだったのかなあ。それから2日間、俺はホルトそっちのけでバックアップデータの回収に血道を上げた。何しろこのPC、色々とやばいデータが満載でね。こんな俺でも所属会社の秘匿データなんかは、一応預かったりしてんだよ。当然の如く俺はバックアップ用のハードディスクを買ったりしていない。そんな金があったら、悲しいかな俺はゴールドを買うのだ。で、データの抜き取りは息も絶え絶えのPC V.S. 半分涙目の俺といった修羅場を呈し、あれはすこぶるダイナミックな2日間であった。

待て、もう少しだけ逝くのは待ってくれ、俺の俺のダイナブック。駄目です、もう駄目です。円盤の回転が止まりそうでありますー。ちょっとタンマ、このメールデータだけでも取らせて貰えませんでしょうか。この期に及んで馬車馬の如く…恨みますよご主人様。何回も私を机から落とし、一日中走らせっぱなしでデータ処理。私は精密機器の粋を極めたノートなのに、場末の会社のデスクトップが如きぞんざいな扱い。こんな最期を遂げる為に、私はダイナブックになったのでありますか? 正直すまんかった。次からは出来るだけ落とさないように頑張るから、せめてもう少しだけ俺の奴隷になってくれい。ひゅううう、う。止まったああああ。駄目だ。まだ死んじゃ駄目だああああ。ぅぅぅぅひゅるるるるる。あ、テメエ、フェイントかよこの野郎。

まあ、そんな感じの2日間であった。そして3日目に電源を入れた所、目出度く真っ青な画面になったので、結局東芝サポートセンターへ修理に出したって訳だ。返って来た見積は表題の通り。46924円(税込)。

俺は見積書片手に憤死しそうになった。ハードディスク交換するだけでこれかよ!と。取り戻して自分で何とかしたろと思ってみたものの、確実性が低い上に送料4000円也がやっぱり取られる。高ぇ! 今日は「!」を連発する文章だな。

泣く泣く俺は虎の子の郵貯を搾り出し、払いましたよ46924円(税込)。一応携帯電話なんかは会社からの支給なんだ。だから容赦なく使い倒している。社長が怒りに震える目でauの請求書を見ている姿が目に浮かぶよ。しかしPCは俺の個人的な所有物だから、会社からの援助は受けられない。それでも俺は、もしかしたらと考えて社長に催促を試みた。

「こんにちは。御久し振りです。突然ですが、パソコンが壊れたので5万円出してくんない?」

余ったお金で久々に御飯のおかずを買おうと思っていたのだが、返って来たのはここで書くのが憚られるような呪詛また呪詛だった。

本当に46924円(税込)はキツイ。俺だって少ない賃金から家賃だ雑費だと遣り繰りして、何とかゴールドを買う金を貯めてんだ。それが一瞬の内にパーだよパー。もう考えただけでひゃはははは。

しかも東芝からモノが返ってくるのが遅ぇ! 電器屋に出すよりも迅速に対応致します。一週間〜10日以内に御自宅へ、という謳い文句を掲げておいて、結局20日近くかかってしまった。畜生、東芝め。でも、返ってきたパソコンはピカピカに磨かれていたし、その後修理が遅れた事への謝罪の手紙も来たし、東芝は良いメーカーだと思います。我ながら好フォローである。

こうして足掛け約一ヶ月、俺はネット無しPC無しの生活を送っていた。ここまで書けば大体分かると思うが、さし当たって今回は特筆するような活動をした訳ではない。そういう月は無駄話で埋めるのが常套手段になりつつあるが、こんな駄文でも給金が出るのは少々申し訳ない気がする。まあ、多分、誰も俺の報告書なんか読んでねぇよ社長さんよう。

以上。次回は最終回だ。あまり危険な事はしない程度に頑張ります。

そうそう、何か、バロールってのが出たらしいですよ。

 

文責:平田安男

 

 

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