帰ってきたら頭突き
今月は丸々ボルカ・ボストーカが居なかった。相棒のぴちがいフェリオンの事だ。
まあ、会社の方で人手不足だってんで駆り出されたのは理解する。こういう時に助け合うのが組織だもんな。俺も今回はどうしてもあいつの異能が必要って訳じゃなかったし、頑張れよと送り出したさ。それについては何ら問題ない。
にも拘らず俺が非常に怒っているのは、一つ上の活動報告、ボーリャの報告書についてだよ。何なんだ、あの報告書然とした報告書は。あのバカアマ普通の文章が書けやがる。つまりあれか、マスターのレベルに合わせて文章のレベルも変わると、君はそう言いたいのか? ふざけんな畜生。あののたくったようなキモ文章を、俺がどんな気持ちで赤ペン入れて中途で止めるを繰り返していたと思ってんだ。ああ、むかつく。ガッペむかつく! 帰って来やがったら絶対絶対普通の日本語を書かしてやる。絶対だ!
とまあ、初段から私的な事を書いて申し訳ないが、実の所今回もさして報告するような活動は無ぇのな、これが。毎度毎度のお断りと化しつつあるが、事実なんだから仕様が無い。話全体も何て言うか、まあ、取り立てて派手な展開は無かったって言うか、一言で言えば「クリスティンとの交流色々」。いいのかなあ、大ゲームの御時世に。
で、俺はクリスティンに張り付いてパンの耳を食っていた訳。相変わらず芸の無い行動だが。たまに本を読んで聞かせてやったよ。動物が可哀想な話を。はっきり言って、平気で犬猫殺しまくりのクリスティンに対して何の痛痒も無いのは分かっていたが、正直あれらは俺からの嫌味だ。という気持ちも向こう側には伝わっていたらしく、こんな調子じゃ俺がどうこうして改心させるなんてのは無理な話だし、俺自身もやる気がしねえ。それでも延々と色んな話をかましてやった。
「片足ダチョウのエルフ」
俺が一番格好いいと思うヒーローの物語だが、どう考えても動物がかわいそうな話じゃねえや。
「南極物語」
南極で鎖に繋いだままにすれば、そりゃ死ねって言うも同然だろうというのが引っ掛かり、どうも感情移入が出来なかった。
「忠犬ハチ公」
おっさんに貰った焼き鳥の串が喉に刺さって死亡というのが引っ掛かり、どうも感情移入が出来なかった。
「一杯のかけそば」
どうなったんだろう、あの作者。
とまあ、俺も適当な事をやっていた訳で、それでも一応は護衛の役回りを果たしていたんだぜ? その過程で色んな人がクリスティンに会うのを見てきた。彼女に素っ気無くあしらわれた人も居たし、心動かす人も居た。その中で、一人おかしな奴が居る。そいつは名前と顔をあの場で晒していて、奴もそれを承知の上で博打を打ったってとこだろう。ま、何をクリスティンに植えつけたのかは知らんけどな。
それにしてもクリスティンは確実に変わりつつある。恐らくそれは良い方向に。俺が彼女と和解する事は金輪際無いだろうが、それでも彼女の変化を阻害するような野暮はしねえ。救えるもんなら、救ってやってくれよってとこだ。
文責:平田安男