C班の役割、その成果
言うまでも無い事だが、此度の戦いにおける基幹的存在とは鬼哭谷の修行者達に他ならない。その奮闘と成果はそろそろ外部へと伝え聞かれているかと思われるので、ここでは敢えてヘリ部隊の、所謂C班の行動について回顧する。
エスケイプ・トゥ・ビクトリー、略して作戦名ETVは、大別して以下4つの班で構成される。
・A班:対後舁戦と逢蒙の救出。
・B班:修行者達による十弓士への対処。
・C班:外部からの来援による十弓士への対処。
・D班:情報収集活動。
各々の役割は極めて重要であるのだが、仕事内容を見て分かる通り、彼等が居なくとも戦闘は遂行されたという班がある。C班の事だ。
C班は外から仕掛けるという性格上、構成人員に所謂鬼哭谷修行者は存在していない。鬼哭谷に身内がいる、或いはいたという縁こそあるものの、立場的には全員谷との接触は今迄に無かった。
だからこそ重要であったと私自身は回顧する。谷との縁が薄いC班は、言い換えれば後舁側にとって想定外であるからだ。これは戦力的に厳しかったETVにおいて、非常に意義のある存在だ。不適切な言い方かもしれないが、C班はボーナスポイントなのだ。そのボーナスポイントが、詰めの一手に至る過程に洗練された筋道をもたらしたと自負する次第である。
サポート的な役割を担う者は、ある部分でサポートされる側を上回る必要がある、とは私の持論だが、ETVを発案した者もその辺りはよくよく心得ているらしい。C班設立のコンセプトで重視されたのは一点、機動力だった。
戦いの口火を切るという性格上、C班に求められたのは迅速性である。思わぬ場所から速やかに一撃を与え、相手側の統制に混乱を及ぼす。それを実現する為には、地形と天候状況を鑑みる限り、選択肢はヘリしかなかった。そして直接の戦闘に携わる者にも、高機動と戦闘能力が求められる。だから腕利きのヘリパイロットと、パートナー持ちのアウスターグ二人を揃えられた時点で、C班は実質完成された存在と成り得た。以下、C班参加者の名を誇らしく記しておこう。
○中里陰月:ヘリパイロット
○イレーナ・フォン・レベオン:アウスターグ1
○香車咲子:アウスターグ2
○ベルベット・ベリオル:フェリオン1
○ボルカ・ボストーカ:フェリオン2
概ね満足すべき成果を挙げたC班ではあるが、念が残るとすれば取り逃がした十弓士の多さだ。包囲網をスノーモービルで破った彼等に追い縋れるとすれば、それはC班を置いて他には無い。勿論役割としてそれもあったはずなのだが、どういう訳か行動が遅れてしまった。強力なドレーガである後舁に忠実な者達を、一人でも多く抹消出来る機会を失ったのは惜しい事だ。
個人的には、香車咲子に感謝したい。彼女は経験の浅いロアドながら、私という道具の持つ異能を上手に操ってくれた。気の力をヘリ防衛に収束させた戦法を、私は高く買っている。久々にフェリオンとしての在りようを発揮させて貰えたと思う。彼女の今後を見守ってあげる事が出来ないのは心残りであるが、恐らくは前のマスターが、私の異能をガチャガチャとしか使えないアイデア貧乏が、私の帰りを一日千秋の思いで待っているはずだ。私は仕方なく帰るけれども、彼女の健闘を祈っておきたい。
文責:ボルカ・ボストーカ