またまた鬼哭谷研修所通信報告書

 

 あー、テステス。PRエージェンシー聞こえてますか? こちら鬼哭谷研修所。鷹乃です。どうぞ。

 え? 「衛星電話ですから、「テス」も「どうぞ」もいらない」って。

 またまた〜。山本さんもそう堅い喋り方しなくてもいいじゃない。ジョークよ、ジョーク。何だったら「チェックメイト・キング・ツー」とか言いましょうか?

 「そんな古い番組よく知っていますね」って、いま衛星放送で再放送やってるでしょ。サン○ース軍曹って最強だと思わない? ドレーガじゃないかしら。

 あーはいはい。口数が多いっていうのはランスに何度も言われてます。

 ボス? ボスとは無事合流したわよ。もっともすぐに修行場を脱走したから今頃は札幌あたりだと思うけど。ホント、元気ねえ。

 というワケで、報告行きます。

 

 まず問題の整理をすると、

@    アナスタシアの修行場を営んでいる動機が不明確。

A    アナスタシアの挙動が不審である。

 これについてはイザーク・コンドラチェンコ教官やその他のアナスタシアを「親」とするドレーガの違和感や不審も肯定要素ですね。

 具体的には、「猛烈な違和感を感じた」「確かにアナスタシアなのに、アナスタシアではないかのような、そんな違和感」なんてことを言っていました。

B    アナスタシアの新しい側近の存在。

 新しいって言っても14年前からなんだけど、アナスタシアの執事であるコンドラチェンコが遠ざけられ、アナスタシアの新しい側近とされる教官曰く「ヨボヨボのジジイ」が側近になったようね。

 代わって教官は修行場の設営とかなんとか、閑職というか、アナスタシアから遠ざけられたようです。

 

 要するに「らしい」とか「ようだ」といった情報の羅列ですね。

 これらに対する打開策として、あたしはアナスタシアが謁見に使う建物への強行偵察を計画しました。

 具体的にはアナスタシアは紋章者の逃亡を許さないことから、仙輔が修行場を脱走してアナスタシアを揺動し、その隙にあたしとボスが建物に潜入するものです。

 建物の調査自体はプロの探偵であるボスが行い、あたしは例の老人と接触できないか図りました。

 あたしの想像では、アナスタシアは中身が入れ替わっていると見ました。

 可能性としてはドレーガの能力「記憶操作」で、朦朧状態になっている。もしくは別の記憶を入れられて操られているということもあり得ますが、アナスタシアほどのドレーガをそんな泥縄のやり方で操り続けられるとは思えません。

 いずれにしても後舁、もしくはそれに近いドレーガが老人である可能性は高い。

 判断材料がない以上、行動によって相手の反応を引き出し、それによって判断材料を増やすしかありません。

 この計画は、普通に考えれば10中5くらいは殺される可能性があると思います。しかし、これまであたしは迷鳥のおさんどんなんかやっていて、危険はランスに任せていました。

 もちろん、ランスが正攻法であたしが搦手というのは最初からの取り決めでした。

 だからこそやるべき時にはあたしも命懸けでやろうと思ったのです。

 まあ、結果は楽勝だったけどね〜。んふふふふ〜。

 

 肝心の結果ですが、建物の調査では地下室などは見つかりませんでした。

 老人には会いました。

 彼はアナスタシアからは「ホウモウ」と呼ばれています。

 後舁の伝説に出る「遙蒙」ではないかと思われますが、彼が本人であれば、ドレーガか、フェリオンを外された元アウスターグ。もしくは「遙蒙」を名乗る一族でしょう。

 遙蒙は非常に後舁を恐れており、あたし達のことも彼曰く「君たちのことも後舁が私を試すためによこした手下ではないかと疑っている」だそうです。

 よって具体的な情報は何も得られませんでした。

 ただし、遙蒙が自身のことを「遙蒙の秘密を知る者」と云い、秘密を漏らせば即ち遙蒙が秘密を漏らしたことが後舁に知られることを恐れる以上、彼に会えたこと自体が最大の収穫と言えるでしょう。

 今後、あたしとボスは任意の時間に遙蒙と会えることになりました。

 また、隻腕でオッドアイのフェリオン・アーグニャの身柄を遙蒙は非常に気にしています。

 果たして遙蒙を名乗る人物が本当にそうなのか、アーグニャを重視する理由は何なのか、そこに事態の真偽を見極める礎があると思います。

 なお、最大の関心事であるアナスタシアのパンツについてですが、彼女の私室を発見できなかったため、確認には至りませんでした。残念です。

 それと寒さも厳しい折、鬼哭谷では凍死者も出かねない状況です。

 身体を温めるには鍋が一番!

 そういう訳で、ボスとファルコンに食材その他の調達お願いするので、お金はお願いしますね。

 ではでは、再見!

 

<文責:鷹乃瞳>