続・鬼哭谷研修所通信報告書
はいはあーい、こんにちわー!
こちらは脳ミソ筋肉野郎のパラダイス、鬼哭谷研修所でぃーっす!
ん、「やけにテンション高いな」ですって?
そりゃああああああもおおおおおおおおおおおお!
お店の夜叉熊ポーの開けた大穴から吹き込む風が、寒い懐をよけいに冷たくするとか、ポーに根こそぎ食糧奪われたおかげでお腹が空いてたまらないとか、店をやってそれなりに好評だったのは良かったけれど、めぼしい情報なんてネズミのウンチほども入らなかったとか、そんな泣き言なんて言いませんともっ!
武士は食わねど高楊枝! 空元気も元気の内ですから!
やる気なんて出まくってもお大変ですよお!
あは、あはははははははははは……はぁ。
すみません。マジメに報告します。
とりあえず現段階では軍曹……じゃなかった、コンドラチェンコ教官からの情報は出尽くしたと見て良いでしょう。
ここでの教官という仕事も実質的な左遷人事みたいですし。
基本的に例の『三本足の烏の紋章』の意味やこの研修所をアナスタシアが設立した目的、修行者を選抜する基準につて、彼は何も知らされていない様子です。
それらの事柄について、教官自身は疑問も持ちながらもアナスタシアの命令に忠実であろうとしているようです。
そのためか、あたしの印象ではあたし達のような存在が活動することを暗黙の内に了解している気配すらあります。
また、仙輔を始めとした『紋章持ち』の者の逃走をアナスタシアは許さない構えをしていますが、その理由の一部もつかみました。
それと、14年前からアナスタシアの側近となった教官曰く「ヨボヨボのジジイ」についての外見、印象、現在地についてもある程度の情報は得ました。
『三本足の烏の紋章』に関係があることから、ドレーガ後舁が絡んでいると見る者も多いようですが、確証を得ていない現段階では、断定するのは尚早に思えます。
現在、早期に為すべきことは、推測を廃し、可能な限り確定された情報を得ることでしょう。
そのための手段は得ています。
問題は今行動を起こすことが、時節を得ているかの判断です。拙速である可能性は否めず、判断に苦慮しています。
……え? ええっ? ちょ、ちょっと待って!
……はあ。そりゃそうですけど。
了解しました。
じゃあ、仙輔と考えておきますけど、どうなっても知りませんよ。
備考:この報告書は、鬼哭谷研修所から通信連絡された内容をそのまま文章化しました。
なお、通信連絡直後の鷹乃瞳の言葉は次のようなものであった。
「ボスが、ここに来るって」
文責:鷹乃瞳