鬼哭谷研修所通信報告書
鬱蒼とした森林を抜け、山を越え、谷を渡り、そうしてたどり着いた鬼哭谷研修所はまさに鬼すら哭く地獄のような修行場であった。
なーんて書くと恐ろしい場所に聞こえるけど、ようするに、毎晩インディジョーンズごっこをやってるワケよ。
大の大人(子供もいるけど)が、まったくバカみたいよね。笑っちゃうわ。あははのはーっと!……笑ってなきゃやってらんないわよ。ケッ!
それにしても、穴を掘ってまた埋める修行には閉口したわ。あれって、ちょっと昔のアメリカの重刑務所でやっていた作業と同じよね。あれを毎日やっていると、どんなにタフな囚人も根を上げるって話ね。
それにコンダラ! 何だか懐かしいって山本圭介が言ってたわねえ……って、あたし達はどっかの宇宙忍者かって(苦笑)。
修行は過酷。褒美はなし。いえ、正確にはコンドラチェンコ教官の投げやりな褒め言葉と修行所を作ったアナスタシアから訳のわからない紋章を胸に刻まれる。
まあ、正直なところ、ロクなものじゃないわね。精神汚染されて操り人形になるとか、ドレーガに変容するとか、そんなものかも知れない。確証はないけど。
さらに食糧は米を少しだけ。水と塩は豊富にあるけど(※筆者注:リアクションには記載されていませんが、生存必需品なので豊富にあるだろうと判断しました)、潤いのない生活も甚だしいわね。
そこで! 修行場内にあたしが作った一善飯屋「迷鳥」! 名前の読み方は、「めいちょう」でも「まよいどり」でも好きに呼んで頂戴。
うちに米でも茸でも芋でも栄養の偏った食材を持ち込めば、あたしの栄養バランスのとれた食事が食べられるって訳よ。先輩修行者は修行場内の情報でもOK。
中には、「本質的にライバル関係にある修行者同士が馴れ合う意味があるのか」言う人もいるけれど、誰を敵と呼ぶべき相手がまだ見えていない今の状況で、全てを敵と見なすのは狂気の沙汰と言うべきね。
故事に曰く、呉越同舟と言うでしょ。
まあ、来たくない人は来なければいい。ただし、米ばっかり食べてるとビタミン不足で死ぬかも。疑うなら、日露戦争中の戦病死者の内4万名の病死原因を識ることね。
ともくかく、今あたしは誰を敵にする気もない。
できれば「迷鳥」を中立地帯にして、心と身体が休まる場になればと思っている。
「迷鳥」の営業を止めようとする者がいれば、その者こそがあたしの敵足るべき者となるでしょうね。
以上、報告終わり。
備考:この報告書は、鬼哭谷研修所から通信連絡された内容をそのまま文章化しました。
文責:鷹乃瞳