ホリィとの会見
先月の夜会で聞いた、ホリィがヘンリー卿の与太話を信じて幻を追っている、との噂話が気になっている。本当の所は、おそらくホリィ自身にも、判らないのだろう。聞けば、記憶の宮殿の奥に潜む、「始祖」の記録を探すのだという。記憶の宮殿は、探索自体が危険を伴うものである上に、番人と称される存在がガードしており、困難極まりないクエストだ。それ故に、ホリィも今回まで、決行を見合わせていたのだが、ロジックの襲撃により、遂に覚悟を決めたのだ。ホリィは、ロジックの手により、無理やり<黒>に染められて来、自らの<ロアド>と共に、隠遁生活を送っていた。あたしと似た境遇なので、どんな人物なのか興味深く思っていたが、実際会ってみると理性的で、ロジックなどとは違って、<黒>としてはよく持ちこたえていると言える。あたし自身の素性と心情を話し、<黒>を滅ぼすための共闘を呼びかけたが、はっきりした答えは得られなかった。やはり、自らの<ロアド>を持った事で、それが執着となり、決断を鈍らせているのだろう。そんなホリィも、何れは決断しなければならない時が来る事を、感じているようだった。それを見て、やはり自分の選択は正しかったのだと改めて実感した。やはり<ドレーガ>などという歪んだ存在は、許されるべきものではない。あたしは、決意も新たに、ホリィに別れを告げた。
文責:ファラ・ルーシェ