ダイナブックの修理見積が届いたよ
92730円(税込)。
さすがにこの半ピラ用紙を見た時、俺は死んだ。無理。支払うのは絶対無理。とは言え俺の可愛いダイナブックを見捨てるには忍びないので、3回くらいに分けて支払うようにしてもらった。これで前回と合わせて費やした修理費は約14万円。どう考えても新品1台買える金額だぜ。俺、何やってんだろうなあ。人生ってこういうもんなのかなあ。こういう無駄と無駄を積み重ねて結果無駄を導くのが俺の人生って奴なのかなあ。
かような俺の人生観は、俺の「ホルト家と猫」における活動履歴と相通じるものがある。少々強引に本題へ戻ったが、対バロール戦とその後を云々の前に、今一度俺と相棒のぴちがいフェリオンが辿った軌跡を省みたいと思う。
<第1回>
ペット殺しを探し回った結果、夕飯のおかずに具合のいいゴミ捨て場を発見する。
<第2回>
ペット殺しと勘違いし、リンダを異能攻撃。後に大事な記憶を幾分失わせてしまうというおまけ付き。
<第3回>
掘渡邸前で内職に勤しむ。
<第4回>
リンダに詫びの鯖寿司を持参し、お土産に称号「獣使いの不審(BP-100)」をゲット。
<第5回>
ホルト屋敷の前で内職に勤しむ。
<第6回>
第一次掘渡邸防衛戦。ぴちがいドレーガことクリスティンを迎撃し、見事取り逃がす。
<第7回>
第二次掘渡邸防衛戦。再度クリスティンと交戦し見事取り逃がしかけるも、誰かが捕まえてくれました。
<第8回>
ふん縛ったクリスティンの前で、動物が可哀相な話を読み上げて嫌味三昧。
<第9回>
クリスティンに心のこもらない説教一発。ボーリャは365歩のマーチを歌う。
なんじゃこりゃ。どこの馬鹿だこれは。俺か?俺なのか?俺、こんなことしかして来なかったの?もしかして俺は、ひょっとすると馬鹿だったのだろうか。男の顔は履歴書というが、今の俺に刻まれた履歴書というのは大概こんなんである訳だ。自分自身に感服するよ。すげえな俺。2PC分突っ込んでおいて仕掛ける行動じゃねえよこれは。
そういう罪滅ぼしも兼ねて、俺は最終回、ブリュメールで人質を取りやがったバロールとの戦に赴いたのだ。ま、奴があそこで人質を盾にしなけりゃ、正直掘渡邸で犬猫と戯れるか、PRA本隊の支援に行っても良かったんだがな。教授とバロールの抗争なんざ、きっぱりどうでもいいってのが本音な訳。それでも関係のない奴に害が及ぶってのはムカつく話でさ。ほら、学校で飼ってるウサギが何者かに殺された、なんてニュースを聞いたら、君はイラッとくるだろう?
圧倒的に弱い立場のものを、平気で踏み躙る奴がこの世に居るって事にさ。それにしても、長生きし過ぎた副作用か何かは知らんが、ドレーガにはそういう奴が多くてホント困るぜ。
何はともあれ、最後の最後で俺達は上手くやったと思う。アウスターグの異能程度でどうにかなるんなら、バロールを倒すのに聖錬術なんざ要らんのも分かっていた事だし、だからこそ人質が逃げる時間を稼げたのは目論み通りだったのさ。本当はこの時点で俺もトンズラこきたかったんだが、下手に目立つとバロールの魔眼を喰らっちまうと思ったから、敢えて地味に留まった。俺にしてはいい判断かもだ。あの時、案の定魔眼を浴びせられたアウスターグのあんた。その格好は幾らなんでも目立ち過ぎだってば。
今は全てが終わって狭い六畳一間、香車董子が嫌々ながら貸してくれたノートでもって、俺は相も変わらず駄文を書いている。あれから掘渡邸には行っていない。聞いた話では、聖錬術行使の過程でリンダの心に大きな負荷がかかり、何でも半封印状態で深い眠りについているのだそうだ。そして彼女の妹であるクリスティンは、リンダに代わって屋敷を守る為に留まっているのだという。俺は今もってクリスティンというドレーガが大嫌いだが、それでも殺戮者から一歩を脱け出し、彼女は変わって見せたんだ。だったら、これ以上奴を敵視するような野暮はすまい。偶にはどうしているか、見物に行ってみたいとも思う。多分、互いを見かけたら石を投げ合う羽目になるだろうけどな。
そんな事より今は内職だ。俺の隣でチクチク針を動かしているボルカ・ボストーカには、もっと早く手を動かせと言っておきたい。歩合制の出来高払いなんだよ、このバイト。
思い起こせば一年前、俺はコイツに「私に終わりを下さい」と言われて契約を結んだんだよな。なんか契約も内職もエンドレスモードに突入しつつあるが。しかし、これでいいじゃねえかと俺は思う。ドレーガを滅ぼす為に作られたのがフェリオンだとしたら、俺にとっちゃボルカはフェリオンじゃなくていいんだ。言語能力に多大な問題を抱える、ちょっと頭の中身が大変な、単なる俺の相棒だ。戦い敗れて終わりなんて、寂しい事は言うな。お前が納得する所まで、俺はお前を守り続けよう。
取り敢えず今は、愛しのダイナブック救済に全力を注ぎ、何故か所属がコースマスではなくウェルスエアになっている俺の身の振り方を、真剣に考えたいと思う。
畜生、ボルカですらコースマスの社員なのに。あのボルカですら!
文責:平田安男