魔女の大鍋

 

 今回、我々PRエージェンシーは、ホリィ・エアヴァグリーンの持つ『始祖』の情報の真偽確定のため、地返村に行くこととなった。

 とはいえ、地返村はロジック・グレイ襲撃が予期される非常事態というべき状況だった。我々としてはこの状況を早期に終息させ、その後に出てくる難民とも言うべき地返村住民の安全を確保することでホリィの信頼を得、情報を得る。虫の良い話だが、そのような全体像を描いていた。

 しかし、結果は失敗だった。ホリィが拉致されなかったことは問題ではない。我々は非戦闘員を一人も死傷させることなくあの夜を乗り切るつもりだった。

 ヘリが使えなかったとか、ロジック側が無秩序に行動したというのは、失敗点の一部に過ぎない。

 戦争の勝敗を決する要因によく云われるものに「天の時」「地の利」「人の和」がある。

 今回それはどうだったか。

 まずは「天の時」。ロジックの襲撃は、ホリィのロアドが多数集まる「祭り」の日に決行される可能性が高いことは予測されていたが、実際にいつ襲撃されるかはロジックの判断次第だった。

 「地の利」については、ロジック側に土地勘はなく、十分に有利なはずだったが、警備側も同様に土地勘がなかった。具体的には次の項に書くが、警備というものは統括された指揮系統がなくては実用性を持たない。

 「人の和」については、話にもならない状況だった。Alexaは及び腰で支援はなく、予想される事態に対し、ホリィは移動を肯んじ得ず、地返村住民もAlexa系列社員も一本化された指揮系統がなくては烏合の衆同然だった。

 例え烏合の衆でも中核に組織があれば、一定の組織行動は可能だろうと判断していたが、やはり甘かったと言わざるを得ない。

 もう少しホリィの信頼を得ていれば、とも思うが、それを言うことは無意味だろう。

 結論から言えば、今後も予測されるロジックの襲撃に対し、被害を軽減させるには、Alexaの後援を得てホリィを中核とした組織を編成するしかないと判断する。

 それを成さなくては次ぎもまた今回のような「魔女の大鍋」が再現されるだろう。

 また、ホリィの持つ情報の如何に関わらず、Alexaは地返村ロアドを援助する責務がある。それをやらずしてAlexaの存在意義はない。

 

文責:弓月亮介

 

 

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