大成功。
ペット連続殺害事件という性根の腐った事件を追って、サバ缶を買うべくバイトに明け暮れたり、猫の集会を求めてフラフラしてみたり、果てはリライトマシーンというツールをおっかなびっくり使ってみたりと、珍しく色々に動いてみた今回の俺様だったが、結果一定の成果を挙げられたという感触がある。俺的には大成功だったと断言してみてもいい。
リライトマシーン。20文字以内に打ち込んだ文章が目の前で具現化する、魔法のタイプライター。嘘くせえと思われる向きもあるだろうが、でもこれゲームの中の話ですから。と、そういうツールを俺は猫の集会で使ってみた訳だ。「猫の集会に参加。ボスが心当たりを教える」と書いてみた訳だ。サバ缶差し出して猫相手に頭を下げてみた訳だ。そうして得られた情報というのが、詰まる所残飯満載のゴミ箱だった。
俺にとっては貴重な情報だ。
対ドレーガ不戦主義を貫くアウスターグな俺は、常に定収入に喘ぐ毎日を送っている。はっきり言えば主食はパンの耳だ。それも2日に1回だ。スーパーのおばちゃんの視線が痛いんだ。こんな食生活でも餓死は有り得ない不死身の俺だが、幾ら不死身でも腹は減るんだよ。なりは不死身でも心はショボイ。食うべきとの頭からの命令を無視し続ければ、この先俺はぴちがいへの道をまっしぐらだ。かと言ってなけなしのバイト代は粗方ゴールドに化けるので、食料確保は俺にとって切実な問題だった。
そこで件の残飯ゴミ捨て場。ここだけの話だが、マジであそこ凄え。バケツの中でゆるく縛られたポリ袋はお宝満載。出来たての残飯が闇鍋状にのたくってやがる。そりゃ野良猫も目をつけるだろう。もっと真面目にクチを縛っとけと呟きながら、俺は豚の生姜焼きをゲットした。早速夕飯に添えました。美味しゅう御座いました。おしまい。
「で、結局本来の目的は大失敗だったのでありますね?」
はい、ワープロ打ちを眺めていた相棒の死体が、生意気にも突っ込みを入れやがりました。その通り。リライトマシーンに「心当たりを云々」と書いた俺は、「何の心当たりか」を決定的に抜かしていたんだ。そりゃゴミ箱行きも尤もだよな。あはは。俺って馬鹿。
…このまま終わらせてたまるかい。こんな屈辱を味わうのも、残飯漁って糊口を凌ぐのも、みんなペット連続殺人犯が悪い。いや、そんな事はないが、ともあれここで終わったら男が廃る。
次はヤル。必ずヤル。幸い殺人犯と思しき奴の居場所も目途が立った。高い塀と鉄の扉の某住宅。住人は獣使い、やたら猫が集まっている、との噂も入手した。ちなみにこれらの情報収集は、他のアレクサ達が成果を挙げた代物であって、俺様は何一つ貢献しておりません。
次こそは!と心に誓う俺の目の前には、ほとんど手を付けていないハンバーグが鎮座している。食べねえんだったら最初から注文するんじゃねえよ、このブルジョアが。俺が食うけどさ。
文責:平田安男