ネコの集会って、ありゃ井戸端会議と同じようなもんなんだろうな

 

 俺はこの世界じゃ「黄金の朝(アウスターグ)」と呼ばれている。不死身のドレーガの喉元に匕首を突きつける、矢張り不死身の存在だ。だから御同業連中はドレーガを狩る生臭仕事に絡む事が多いのだが、残念でした、俺はそんな危ない事は致しません。大体冗談じゃない。幾ら不死身だからって、殴られたり刺されたり、あまつさえ溶鉱炉の中に放り込まれたら痛いに決まっている。ドレーガ狩りは確かに実入りは良いし、まんまゴールドで支払ってもらえる事もある。俺だってゴールドは欲しいが、命の方がもっと大事だ。いや、俺は一応不死身なのだが、そんな致命傷を前提に危地へ飛び込むなんて事を繰り返していたら、きっと頭がパーになるに違いない。いざアウスターグから足を洗った日には、以前のクセが抜け切れなくて、身の程知らずな仕事を引き受けて即死亡。人間、石橋を叩いて渡らないくらいが丁度良いですよ。

 そんなヘタレ小僧の俺にぴったりだったのが、巷で少し話題になっている「ペット連続殺害事件」だ。こいつはいい。何しろ犯人は目に見えている。きっと禍事諸々を心にどす黒く吹き溜まらせ、そのはけ口を弱いものを傷つけて代償する、俺を上回る阿呆ボンに違いない。俺、自慢じゃないけど不死身ですから。そんなヘッポコを警棒で殴って殴って殴り回し、天国の畜生共に土下座で謝らせた後、警察へ突き出すなんざチョロイもんだ。ちなみにアレクサ上層部に、今回の事件を正式に扱わせる為、以下の上申を出しておいた。

『昨今のペット殺害事件にて、当方の情報源の一人である鑑識の人間から、幾つかの特異性を指摘された。状況証拠を全く残さずに連続で犯行を成功させている点。何らかの器具を用いて血液を抜いた形跡がある点。これらを鑑みるに、アレクサ外の異能力者に関わり合いがあるものと推測される。事件の全容を推し量る為、活動の許可と費用の供出を認められたし』

 ま、みんな嘘だけどな。これに対してアレクサ側は『日給4千円:期限は二日』でゴーサインを出したもんだ。凄いぜ、二日で八千円! ティッシュ配りより実入りがいいし、ゴールドは4グラムくらい買える計算だ。仕事というのは、このくらい効率的にやらなきゃ駄目なんだって。

 で、どうやって犯人の情報を得るかだが、

「猫やんに直接聞くのがよろしいかと思われましょう」

 と、俺の馬鹿相棒が言った。馬鹿か、と思ったが、俺は考え直してコイツで決める事にした。確かに目撃情報がほとんど無いこの事件においては、徘徊する猫やん共が何かを知っているかもしれない。ここで疑問に思うのが「そもそも猫と何語で話すんだ。馬鹿か」と言ったところだが、俺の相棒はしげしげとウェルス支給のタイプライターに見入ったんだ。

 リライトマシーン(β版)。

 こいつを使うのは初めてだ。正直半信半疑だが、興味深い結果になるかもしれない。

 

文責:平田安男

 

 

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