会社説明社長談義
よお。俺の名は弓月亮介。PRエージェンシーの代表をやってる者だ。
俺のことは弓月でも、亮介でも、なんだったら亮ちゃんでも好きに呼んで構わねぇ。チームの連中はボスなんて呼びやがるが、まあ、社長なんて他人行儀な肩書きで呼ばない限り、俺はなんの感想も持たねぇよ。
あー、判ったわかった。そうキャンキャン喚くな。
会社紹介ビデオに使うってんだろ? 任せろよ。この俺の魅力で就職希望者殺到だぜ。
俺の性格はいたって単純。欲しいものは堂々と手に入れる。気に喰くわねぇことはやらねぇ。それだけだ。
俺は、俺がそれを主張する分、他人がそれを主張するのも認める。
要するにこの会社もそういった性格なんだ。
チーム全員がやれることをやる。
その代わり俺は、メンバーを指揮し、連中が死なねぇようにする。
義務と権利は対等に引き合うもんだからな。
あー? その割りに給料安いだとお!?
そんな文句はADRに言えってんだ。
それに、よ。信頼は、美しいもんだぜ。
ちょっと話が逸れたな。
この子会社の主な業務は「未確認情報の確定」としてある。
では、「未確認情報」とはなにか。
例えば、ネス湖のネッシー。
ロッホ・ネス・モンスターとも呼ばれ、中生代のプレシオサウルスが生き残っていると、真しやかに喧伝され、マスコミやオカルト好きの連中が面白がって採り上げた、あの未確認生物の代表格だ。
結局あれは、ブームに火を点けるきっかけを作る写真を発表したウィルソンが、あの写真はおもちゃの潜水艦を使った偽物だったと認めた報道が流れ、ブームは下火になった。
だが、実際はどうだったのか。
ウィルソンの写真は偽物でも、聖コルンバの伝記を始め、いくつもの目撃例も存在する。
「未確認情報」とはつまり、確認のしようがない情報。もしくは意図的に実態の隠された情報。というものだ。
その未確認情報をどうやって「確定」するか。
俺たちが直接見てくればいい。必要だったら、クライアントも同行してもらう。
そのためのスタッフとして、うちには戦闘要員から看護師まで、優秀なメンバーが揃っている。
ちなみに会社のモットーは、「死なない程度に頑張ろう」「皆で幸せになろう」だ。
確かにロアドは厳しい。
普通に大学出て、普通にサラリーマンやってりゃあドレーガなどと戦う羽目には遭わなかっただろう。
なんでAlexaに入ったんだろう?と疑問に思わなかったヤツはいないはずだ。
だからこそ、俺たちと一緒に人生、棄ててかかって見ないか。
人生、どこで浮かぶか沈むか分かりゃしねぇが、生きてる限り、必ずチャンスはある。
しぶとく、抜かりなく目を配ってりゃあ、この世は面白いと心底から笑える日は来るのさ。
それこそが「生きている実感」って未確認情報の確定だと、俺は思うぜ。
Practical Research Agency代表
弓月亮介