合縁奇縁

 

 

 


6時半に起きて、1時間半電車に乗って会社に行って、遅くとも21時くらいまで仕事をして、また1時間半電車に乗って帰宅して、飯を食って風呂に入って明日に備えて午前零時には寝る。土日はツレか彼女のようなものと遊びに出かけて気を入れ替えるか、ごろごろ寝転んでだらしなく過ごす。そういう暮らしを一年十年と繰り返し、冠婚葬祭のイベントを経験しつつ老いらくを迎えるとか、人生って奴はそんなもんだと俺は思ってたさ。

 しかし、だ。例えば十年来の友人の顔を、目を凝らしてじっと眺めて、果たしてこれは見知った顔だったのかと、突然記憶が朦朧とする時があるように。

目に見える現実に、ちょっとした揺らぎを感じるような瞬間が、確かに幾度かは、あった。大概はルーチンワークのリロードに脳がついていけなかっただけなんだろうけどな。

 でも、心霊写真の1割弱が科学的説明の出来ない代物であるのと同じく、俺の感覚は時折明確に非現実を察知していた。

がらんどうのホームに入ってきた回送列車から、突き刺してくる視線。

 風呂に浸かって目を閉じた瞬間、背中を駆け上がる怖気。

 不意に耳元へ吹きかけられる囁きめいたもの。

 疲れてんのかと思って気を掛けずにおいたのは、そいつらがみんな「感じたもの」であり、決して「体験したもの」じゃなかったからだ。因ってひとたび「体験」すれば、現実と非現実の境目は、ひどく曖昧なものになる。その、俺にとっての非現実は、女の姿を纏って、向こうから歩いてやって来やがった。

 仕事帰りに駅近くのコンビニで買い物を済ませ、徒歩10分の家路を歩く道すがら、コイツは住宅街の曲がり角からひょっこり現れた。

 見た目はとても綺麗だった。濃茶のワークブルゾンと黒いレザーパンツ、ヒールの低いブーツという出で立ちにはしなやかさが感じられ、等身もいい具合に整っている。顔立ちは、美しいには違いないが国籍不明。髪は真っ白。瞳は黒っぽく濁った濃い赤。その、怜悧と言うか酷薄と言うか、はっきり言えば何も考えていなさそうな目が、俺の方にきっちり向けられてきた。

 あのゾッとする感じは、今でも思い出せる。コイツを妙な外面の女が歩いているくらいにしか見ていなかった俺は、心の中だけで慌てふためき、即座に目を前に戻していた。

 俺は反射的にやばいと思った。何故なら俺は、コイツが俺達とは違う領域に居る別の何か、例えば幽霊みたいなもんだと分かったからだ。その直感は、この先でマズマズのビンゴだった事が明らかになるんだよ。

 俺がピッチを上げてコイツの隣をすり抜けても、背中には纏わり付く視線が濃厚に感じられた。ほとんど俺は逃げるようにして安アパートの根城に転がり込み、やっと一息ついた。脅されたり刃物をだされたりした訳ではないのに、緊張のあまり早鐘みたいに乱れる心臓を宥めてすかして、顔を洗い手を洗い、遅い夕飯を準備する。朝の残りの冷や飯と粉末味噌汁、それに菊菜のおひたしに鯖缶。侘しい献立を手早く平らげ、安物の熱い緑茶でホウと安堵の溜息を漏らした所で、コイツは勢い良く玄関から入って来た。俺は鍵を掛けるのを忘れていたのだ。

あの時のコイツの自己紹介はこんなんだ。

「あらまあ貧相でパッとしない御方。私の事は愛らしくボーリャとお呼び下さいませ。今晩は、私の主殿。今この時より私はあなたの忠実な下僕かつお友達であります。初めまして、仕えられる身の方。私の名前はボルカ・ボストーカ。とある地域では放送コードに引っ掛かってさあ大変。『そのまましばらくお待ち下さい』。間違ってもボボ等と略してはいけません」

 言って、ボボは両頬にそっと掌を当てて俯いた。恥じらいを意味する仕草なんだろうが、如何せんきっぱりと表情の無い顔が伴い、気色悪さを際立たせただけだ。ちなみにコイツの挨拶、順番と文法が無茶苦茶なのは俺の記憶違いではない。後で聞いたのだが、コイツは興奮すると言葉の順序が出鱈目になるんだと。

 で、俺は当然の対処として110番通報をしようとした訳だが、コイツ、頭がアレな割には警察が恐ろしいらしく、途端に縋り付いて首をブンブン横に振り回したさ。留置所だけは堪忍して下さいと嘆願しつつ、俺に話して聞かせた長い長い内容というのが、まあ、俺をどろどろの闇鍋に足を突っ込ませてしまったと言おうか、足が鍋底を突き抜けたと言おうか、ともあれ日常崩壊への第一歩と相成った訳だ。

 曰く、この世はドレーガと呼ばれる吸血鬼のゲームによって歴史が作られたんだとよ。

 曰く、ドレーガに連なる家系の人間をロアドと言って、そのロアドが互助組織を作ってドレーガと喧嘩をしているんだとよ。

 曰く、私はフェリオンという作られた物。ドレーガに抗する為の力を媒介する者、だとよ。

 クソが。屁こいて寝ろ。と言い捨て、俺は119番通報をしようとしたのだが、担架に縛られるのは嫌ですと哀願するコイツに食い止められてしまった。そして、俺が俺自身の存在意義を疑わざるを得ない、とどめの一撃を口にする。

 

「未だ自覚がおありではないようですが、私の主、貴方もまたロアドです」

 

 無論俺は鼻で笑ったのだが、コイツの言う事はいちいち説得力があって、不承不承でも聞く姿勢を取ってしまう。

 曰く、俺の人生は半ば掌握されたものなのだと。誰にと言えば、先の互助団体、アレクサに。

 ドレーガの家系には、漏れなく遺伝的特異素養、ギフトと呼ばれるものが備わっている。しかし、その特異素養には個体差があって、露骨に異能を発揮する者も居れば、全く顕現せずに人生を終える者も居る。例えば俺の両親がそうだろう。田舎で根っからの百姓をやっている俺の親父とお袋が、そんな胡散臭い世界観に関わり合っている訳があるか。

 その点はコイツも同意していた。ギフトの顕現者は、コングロマリットであるアレクサ配下の企業に属するのが通例らしい。ロアドはドレーガに比べれば弱く、力を束ねなければ対抗する事は出来ない。拠ってロアドの自覚が無い者でも、素養ありとみなせばアレクサは何れかの企業に囲い込み、機会を見て内実を明かし、彼等の同志とする。言われてみれば、思い当たる節があった。

ヘッポコ大学をヘッポコな成績で卒業した俺だが、実は東証一部上場の仙石重工で営業をやっている。記念と言うかネタで受けた仙重が、面接一発で俺に内定を出したのはどう考えてもヘンだ。そりゃ通知を貰った時は、耳から血が出る程狂喜乱舞したけどな。高い給金も粗方貯金に回して、エリート意識の権化みたいな同期どもの合間で体育座りをする小市民な俺が、何でよりにもよって仙重なんだろう。そう言えば定期健康診断の折、俺は必ず病院での再検査を指示されていた。MRIで脳波測定やら馬鹿でかいCTスキャンで体を輪切りに撮影やらをされた日にゃ、俺は一体どんな癌だと、ガクガクブルブルもんだったさ。コイツ曰く、それは健康診断ではなく身体検査なんだろうとさ。

 とまあ、あの時は色々ブッ飛んだ話を聞かされたが、それなりに内容は一貫していた。おかげで延々と続いた長話を、眠りもせずに興味深く聞けた、お前の言いたい事は分かったとコイツに言うと、コイツは「それでは」と身を乗り出した。

「私と主従の契約を結んで下さいますか」

やだ。

 ヒィと呻いて仰け反った姿は滑稽だったが、そんな事はお構い無しに俺は捲くし立てた。俺は話は分かったと言ったけど、信用するなんざ言っちゃいない。契約とは何だ。俺がお前と組んで、ドレーガとやらを倒せってか。馬鹿馬鹿しい。俺がそんな意味不明の世界に入り込む理由なんぞあるか。大体お前の寝言の、何処に信じるだけの証拠がある。まずは今迄の話が真実だという証拠を見せてみろ。出来なければ、さっさと病院に帰れ。タクシー代くらいは出してやるよ。等等、後から考えると相当にきつい事を言ったもんだが、夜が明けようという時間までコイツに付き合わされて、俺もかなりトサカに来ていたんだと思う。

 対してコイツは言葉を失い、ただただ不気味な赤黒い瞳で俺を凝視していた。相変わらずの無表情で、感情的な気配も無い。一つだけ、ホウと息つき、コイツは起立した。帰ってくれるのかと思ったら、そうではなかった。白みが差す窓枠の傍に立ち、閉め切ったカーテンに手を掛ける。そして今から証拠を見せますと言って、窓から陽の光を一杯に入れた。

 嗚呼、この時の光景は忘れたくても忘れられねえよ。夜は人間のようなもの、昼は死体というフェリオンの有り様を、コイツは身をもって示したんだ。あのおぞましい姿は、言葉で表現するのが難しい。よくある恐怖映画で、人間が幽霊やらゾンビーを演じるのを結構見たが、本当に死んでいる奴が動いて話す怖さとは比較にもならねえ。人が幽霊を恐れるというのは、こういうものなのかと思い知らされたし、本物の恐怖を前にすると、悲鳴すら上げられなくなるのも初めて知った。

 コイツは一、二秒程自分の姿を晒してから、ピシャリとカーテンを閉めた。直ぐに小奇麗な顔に戻ると、座り直して俺を再び凝視する。あからさまに嫌悪を表して後じさる俺を、コイツは少しだけ悲しそうに見ていた。

 俺はその時、はたと気付いた。コイツの表情が、次第に人間臭くなっているんだ。俺の一言、一挙手一投足をくまなく見詰め、反応を示そうと努力している。俺がきちんと話し合いに応じてくれるようにと。それが分かったから、俺の体の激しい震えは、嘘のように収まったんだ。

「私の言った内容が真であったと御理解頂けたかと存じますが、確かに貴方が私と契約を結ぶ理由はありません」

 そう、コイツは言った。

「然れど私には、手前勝手ながら理由があります。私は見かけ上の姿より、遥かに長く動作してきました。なんなんと続く人々の暮らしのその裏で、幾人かのロアドと共にドレーガを封じ、彼等との契約が切れれば彷徨いを始める。戦い、放浪、その繰り返し。何れにせよ、私は常に闇に居て、人目を避けねばなりません。影に隠れて地面を這う。そういうものに、私は不図疲れを感じるようになりました」

 訥々と続くコイツの吐露が途切れた頃合をみて、俺は尋ねた。何が望みなんだと。

「私に終わりを下さい」

 終わりかよ。

「契約を結び、共に野を往き、貴方の心を深く知って、私は貴方を最後の契約者としたいのです。終わりが如何様な形になるのかは、私には分かりませんが、恐らくは物言わぬ死体となりましょう。でも、私はそれで良いのです」

 コイツは其処まで言い切ると、唐突に背中からひと振りの刀を取り出した。コイツ、やけに姿勢が良いと思っていたら、こんなものを差し込んでいやがった。いやそれ以前に、俺は刀を生で見たのは初めてだったので、少しビビっちまった。

「もしこれ以上関わりたくないとお考えでしたら、契約を結ばれた後、即座に首を斬り落とすでも構いません。貴方が手を掛けるのがお嫌でしたら、私が自身でやります。そう、御下命頂けましたら」

 お前は俺が契約したら、死ねと言われて死ぬような、そんな忠誠を誓うのか。

「それは正しい言い方ではありません。私は既に死んでおります故」

 そう言って、コイツは白刃を鞘から抜き放ち、刃をか細い首に当てた。

 何処から見ても狂ってやがる。そう考えるのは俺の常識的な感覚だ。しかし、コイツの常識ではそうじゃない。コイツが経験してきた世界は俺の想像外だが、凄まじい代物だったんだろうと、短絡的な一言で表す事は出来る。その凄まじさを延々と繰り返した挙句、絞り出したのが『終わりを下さい』。なんつう詮無い言葉だ。しかも、その『終わり』すら、こいつは自分の自由にならないのだ。

 俺はこの時、コイツと契約を結ぼうと決意した。俺がロアドだか何だかは知らない。吸血鬼のゲームなんぞどうでもいい。幾ら俺達の暮らしを引っ掻き回そうが、連中に心まで自由にされる訳が無いだろ。正しく勝手にやってろ、だ。

だが、目の前のコイツを再び夜の徘徊へと追いやるのは、躊躇した。可哀想と言うよりは、許せねぇって感じだった。終わりに救いがあると考えやがるコイツも、こんな奴を作り出したロアドとドレーガのやり合いも、アレクサの配下と承知の会社で、そ知らぬ顔のまま仕事を続けるテメエにもだ。

だったら、やってやろうじゃないかと思った。この暗黒童話の世界に首を突っ込んで、とことんコイツに付き合ってやろうじゃないかと。しかし、動かない死体に戻るを『終わり』と決めるのは嫌だ。どんな形かは知らんが全力であがいてから、終わりとやらを見定めればいい。

「私は既に死んでいます」

 うるせえ馬鹿。

 しかし何だ、情熱だ熱血だのとは程遠いと思っていた俺が、あの時は随分と力みが入っていたもんだ。漫然と、無難に、何も考えないで毎日を過ごしていたこの俺が。ああ、そうか。コイツに俺は、俺と似たものを感じたのかもしれないな。望みも絶望も、幸せも不幸も感じない俺は、動く死体と大した違いが無いのかもしれない。しかし俺はコイツが言うように、このままひっそりと動かなくなるなんて、そんなのは御免だ。だから力を尽くして、二人で生きた証を立ててみせよう。きっとそう思ったんだろう。

 何時の間にかコイツは刀を脇に置いて、俺の一言一句に余さず聞き入っていた。改めて俺が契約を結ぶ旨を告げると、コイツは目を閉じて「ありがとうございます」と言った。額に一滴、汗が滲んでいるのが見える。コイツの仕草や表情は、何処もかしこも芝居気が感じられたのだが、この汗はどうやら本物らしい。

 そしてコイツはワークブルゾンを脱いだ。何をするのかと思えば、黒のタンクトップとスポーツブラも脱ぎ捨てたので俺は驚いた。スタイルは確かに良いが、美術彫刻の如くエロ度皆無の白い胸が目の前で剥き出しになる。開いた口が塞がらない俺を他所に、コイツは先の刀を手に取り、自分の胸の中央に当てて、2、3回軽く引いた。やけに粘着質な血が、ゆっくりと滴り始めた。コイツが誇らかに胸を張って曰く、

「さあ、思う存分血を啜って下さいまし」

 どういう冗談だ。

 と思ったが、冗談ではなかった。これが正統的ロアドとフェリオンの契約手段なんだと。もしこれが考えられたやり方だとしたら、考えた奴は間違いなく変態だ。

 やだやだやだ、と心に思えど口には出さず、俺はコイツの胸に顔を近付けた。だってそうだろう。俺は陽の光の中のコイツを見ているんだ。カレー味のウンコを食えと言うに等しいじゃないか。それだったら鯖とチューをする方がずっといい。鯖はおいしいしな。こいつの血は、何だか酸っぱそうなんだ。

 そうこう考える内に、時間は無為に過ぎて行く。俺は覚悟を決めて、こいつの瞳と同じ色の血を舌で掬い上げようと頑張る事にした。が、その前に、不図疑問が過ぎる。

 どうしてお前、俺を選んだんだ。

「優しい人に見えました。実際、貴方は優しい人です」

 優しいか。女に優しい人呼ばわりされる時は、大概どうでもいい人と同義だったけどな。こいつが言うと、すんなり心に入る気がする。ちょっとばかりだが、俺は嬉しかった。

 

 こうして俺は、晴れてアウスターグと呼ばれる者になった。ドレーガと同じ力を持ちながら、ドレーガと弱点を共有しない反則的な存在に。ただし、俺が失ったものはでかい。実はコイツと勢いで契約を結んだ事を、今は相当に後悔している。

 まず俺は、コイツ以外を信頼する心を失った。一人でいる時は全くそうではないが、他人が傍に近付くや、俺は黒い敵意と警戒感をどうしても膨れ上がらせてしまう。これはアウスターグにおける最悪の副作用に違いない。

立て続けて俺は友人と女を失い、会社も辞めた。今の社会、他人と交われば警戒しかしないような奴が、真っ当に生活出来るはずがあるか。それにアレクサは、多分俺を要注意人物と認定した事だろう。群れから離れた一匹狼を、群れのボスが仲間とみなさないように。

 付け加えるなら、かなり異常に金への執着をするようにもなった。これも副作用だが、アウスターグとしては駆け出しの俺が、早々心を満たせるだけの金を手に出来る訳が無い。都合コツコツ貯めた預金はガクガクと目減りしてゴールドへと変わり、それでも満足出来ない俺は、今、コイツの手を借りて部屋中を金色の折り紙と安い金メッキの小物で埋め尽くしている。スゲエ悪趣味なのは分かっちゃいるが、一方で少し落ち着きを感じるのが大変悔しい。

 おまけに、しゃべれば要領を得ないコイツと金ゴテに囲まれた引き篭もり生活を続けたお陰で、俺はキモイ事この上無い考え事野郎になっちまった。今こうして考え事を詳細に頭の中で文章化しているのは、誰の為じゃなく俺が俺を再確認する為にやっているんだ。ほら、よく一人称形式の小説があるだろ。あんな描写を細かく文章チックに考える奴なんざ、絶対に居ねぇと思っていたら俺がそうなっちまった。畜生。

「どうしたんでありますか我が主。考え事が過ぎるとお腹に毒でありますよ?」

 出た。変わったと言えばコイツもだ。契約を結んでからこの方、妙に馬鹿が進んだ気がする。クソ珍妙な言い回しは更に磨きがかかり、飯を作らせれば鯖の味噌煮に砂糖とクリープを入れるような体たらく。契約前のコイツは、あれでも相当にまともだったんじゃないのか。

「ボーリャであります。日本語のニュアンスで言う所のボーちゃんであります」

 何が言いたいんだ死体。

「そろそろコイツ・お前・死体と言われるのは、乙女的に今ひとつの感ありですし、私の事は可愛くボーリャと呼んで下さいましであります」

 うるせえ、このボボスケ。

「いやん。そんな女性器の一名称を張り切って言うなんて。第二次思春期でありますか我が主」

 言って、コイツは両頬にそっと掌を当てて俯きやがった。コイツ、この仕草が愛らしいとでも考えているのか。動く死体の分際で。分かった。いいだろう。うざい事この上無いのでボーリャと呼んでやる。その代わり俺の事も、もう我が主なんて呼ぶな。俺はお前を下僕なんて思っちゃいない。俺達は対等に向き合って、互いにやって行こうじゃないか。

 だから俺の事は『ヤスオ』と呼んでくれ。俺の名前は平田安男。平たい田んぼに安い男と書く。憶えておきな。

 

<続>

 

 

 

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